学校であった怖い話
>一話目(新堂誠)
>F6

俺はまず、吉岡の安否を確かめた。

「吉岡、大丈夫か?」
返事は無かった。
「吉岡……?」
悪魔の魔力でつい腕を差し出したものの、血を吸われたショックで気絶しているんだろうか。
そう思って俺は、吉岡の腕を取ろうとした。

すると……。
あいつは目を開け一言しゃべり、又静かに目を閉じたんだ。
そして、そのまま目を開けることはなかった。
分かるか?
……死んでいたんだよ。

悪魔はな、吉岡の言葉を聞くと、満足したような顔をして消えていったんだ。
吉岡の言葉は、悪魔への願いごとだったんだろうな。
だらりと投げだされた吉岡の腕は血の抜けたような色になっていた。

大量の血を……吸われたんだよ。
悪魔が俺に「何が欲しい?」と聞いたのは、吉岡がもう死にかけていたからだったんだ。
血の代償に、誰かの願いを叶える……。
そんな悪魔が、この鏡に潜んでいたんだよ。

俺は駆け出した。
旧校舎から、一刻も早く逃げ出したくて……。
吉岡が最後に口にした願いが、俺の頭の中に響いていた。

それは、
俺もよく使う言葉だった。
言い回しは違っても、誰でも一度は考えることに違いない、俺はそう思うぜ。
吉岡が、どういう意味でその言葉を使ったのかは分からない。
ただ、奴の願いは確かに叶えられた。

俺は考えちまったよ。
普段、何気なくこんなことを考えていると、死を呼ぶこともあるのかってな……。
あいつが死に際に、なんて言ったかって?

教えてやろう、お前も気を付けろよ。
こういうことを言ってると、お前だってああいう目にあうかもしれないぜ。
吉岡の最後の願いはこうだ。
「楽になりたい……」
……俺の話は、これで終わりだ。
次は、誰の番だ?


       (二話目に続く)