学校であった怖い話
>一話目(荒井昭二)
>A4

「あった!!」
彼は、早くみんなの所に戻りたかったので、ボールを取ろうととっさに手を伸ばしたんです。
「ンゴゴゴゴゴッッ」
電源が入っているはずのない、コンクリートミキサーが突然動き出してしまったんです。

「ぎゃーーーっっ!!」
ゴリゴリゴリッ、と鈍い音が体育館に響き渡り、腕がどんどん引き込まれていく。
腕を引き離すなんて、ひきちぎりでもしなければできないし、苦痛と動転のあまり彼は、気を失ってしまいました。

彼ですか?
幸い様子を見に来た仲間に発見され一命は取り留めたのですが……。
左肩から腕を切断した彼の入院生活は、長いものでした。
とうとう最後の試合の応援にも行けなかったんです。

彼は、たいそう落ち込みこの体育館の落成式の夜に、腕を失った場所で自殺したんですよ。
不幸な自分を呪いながら。
あそこでコンクリートミキサーに手を入れていなければ……。

悲しかったんでしょうね、自殺した彼の肩には、どこから持ってきたのかマネキンの腕が紐でくくられていたそうなんです。

そうそう、そういえば保健の先生が言っていた8月の初めって、夏の高校野球大会の頃じゃありませんでしたっけ?
それに、そのけが人の所属している部活って、みんな野球部なんです。
それも利き腕をね……。

あれ、そういえば誰か野球部に所属していませんでしたっけ?
さあ、僕の話は、これで終わりです。
次は、どなたですか?


       (二話目に続く)