学校であった怖い話
>一話目(風間望)
>E5

みんな、あきれてる。
少なくとも、僕はそう思ったし、ほかの人たちもつまらなそうに俯いているから、間違いない。
それにしても、この風間望って人は何なんだ?
こんな話をするために、わざわざ来たっていうのか?

先輩も先輩だ。
もう少し、まともな人を呼んでくれてもよかっただろうに。
あ〜あ、頭をボリボリかいてるよ。
何だか、不潔そうだなあ。

「つまらなかったかなあ? おかしいなあ、いつもは大爆笑間違いなしなのになあ」

風間さんは、ぶつぶつ独り言をいっている。
そして、いきなりズボンの裾をまくりあげて、足をボリボリとかき始めた。

ちょっと、いきなりこんなところで、下品な真似はやめてほしい。

「え?」
僕は、息をのんだ。
今、何か見えなかったか?
風間さんの足。
……そう、膝小僧のところ。

膝小僧のところに、子供の顔が見えた。
人面痣ってやつだ。
そいつが、僕のほうを見てニタッと笑ったんだ。
「風間さん!」
僕は、思わず叫んでしまった。
風間さんは、きょとんとした顔で僕を見ていた。

もうズボンの裾は下ろしたあとで、確かめることはできない。
まさか、もう一度足をかいてくださいとも言えないし……。
「どうかした? やっぱり、僕の話、おもしろかったかな?」
「あ……はい」

僕は、言葉を濁した。
風間さんの膝に見えたもの……。
やっぱり、あれは見間違いだったんだろうか。
こんな話を聞いたから?

「これで僕の話は終わりだから。君のご期待にそえなかったのは残念だけど、あとがつかえてるんじゃないの? 次の話を聞いたら?」
僕は、風間さんに促され、みんなの顔を見回した。
そうだった。
まだ話は始まったばかりだ。
次は、誰の話を聞こうか……。


       (二話目に続く)