学校であった怖い話
>一話目(風間望)
>F5

「いやあ、なさけないねえ。
何でこんな奴の取材に、協力しなきゃならないのかなあ」
風間さんは偉そうに、机の上に足を乗せた。
何なんだこの人は。
僕だって、こんな人には取材したくない。

「やだ、机に足のせるの止めてよ」
誰かが言った。
そうだ、その通りだ。
風間さんの方がよっぽどもてないだろうと言ってやりたい。
「なんだよ。わかったよ。
ちょっと待って、足がかゆくてさ」
風間さんは、いきなりズボンの裾をまくりあげ、足をボリボリかき始めた。

ちょっと、いきなりこんなところで、下品な真似はやめてほしい。

「え?」
僕は、息をのんだ。
今、何か見えなかったか?
風間さんの足。
……そう、膝小僧のところ。

膝小僧のところに、子供の顔が見えた。
人面痣ってやつだ。
そいつが、僕のほうを見てニタッと笑ったんだ。
「風間さん!」
僕は、思わず叫んでしまった。
風間さんは、きょとんとした顔で僕を見ていた。

もうズボンの裾は下ろしたあとで、確かめることはできない。
まさか、もう一度足をかいてくださいとも言えないし……。
「どうかした? やっぱり、僕の話、おもしろかったかな?」
「あ……はい」

僕は、言葉を濁した。
風間さんの膝に見えたもの……。
やっぱり、あれは見間違いだったんだろうか。
こんな話を聞いたから?

「これで僕の話は終わりだから。君のご期待にそえなかったのは残念だけど、あとがつかえてるんじゃないの? 次の話を聞いたら?」
僕は、風間さんに促され、みんなの顔を見回した。
そうだった。
まだ話は始まったばかりだ。
次は、誰の話を聞こうか……。


       (二話目に続く)