学校であった怖い話
>一話目(風間望)
>H2

そうかい、
もうやめてしまうのかい?
意外と勇気がないんだな、君は。
ま、それもいい。
やめるのは、君の勝手だ。
だけど、僕は話をさせてもらうよ。

だって、そのために僕はここに来たんだからね。
やめたければ、勝手にこの部屋から君が出ていけばいい。
けれど、僕は、勝手に話をさせてもらう。
それが僕の義務であり、権利だと思うからね。

いいかい?
そんなに震えるなよ。
怖い話を聞きたいと思ったのは君なんだろ?

それじゃあ、この写真を見てくれないか。
これはね、去年の学園祭のとき撮った写真さ。
きれいに撮れてるだろ。
これでも、僕は写真にはちょっとした自信があるんだよ。

何の変哲もない写真だよな。
二人の女子高生が写っているだけの。
君は、この写真を見て何か感じるかい?

実は、この写真は心霊写真なんだよ。
いや、君が何も感じなくても無理はない。
僕も、実際に言われるまで全く気づかなかったんだから。

僕のおじさんに、非常に霊感の強い人がいてね。
その筋では、ちょっとした人らしいんだよ。
その手の事件があると、ちょくちょく呼ばれるみたいだしね。
もちろん、心霊写真の鑑定だってやるんだ。
このおじさんが、何気なく僕のアルバムを見ていたのさ。

もちろん、鑑定をしてもらったわけじゃない。
親戚として、何気なく見ていたんだよ。
ぱらぱらと、アルバムのページをめくる。
おじさんは、ニヤついた顔で、楽しそうに見ていたよ。
そのおじさんの指が、突然とまったんだ。

顔から笑みが消え、一枚の写真に目が釘付けになっていた。
「望! お前、この写真、どこで撮った?」
いつもの穏やかなおじさんの顔じゃなかった。
険しい、それでいて何かに、おびえているような顔だった。
あんな怖いおじさんの顔を、僕は見たことなかったよ。

「……どこって。学校で撮ったんですよ。学園祭のときだったと思いますけど」
僕がそう言うと、
おじさんはまた食い入るように写真を見つめたんだ。
「この子はお前の友達か? この左側に写っている女の子だよ」
「ええ。僕と同じクラスの子ですけど……」

僕は思ったね。
おじさんは、年のわりにいいセンスしてるんじゃないかってね。
「この子は、今どうしてる? 無事なのか?」
突然、変なことを聞くんだ。
僕は、おじさんが年甲斐もなく、てっきりその子のことをマークしたんだと思ったら、どうも違うんだよな。

「この子には、子供が取りついている。この写真に、その子供がはっきり写っている」 そんなことを言い出したんだ。
僕は、慌ててその写真を奪い取った。
けれど、僕には何も見えなかった。
今の君と同じようにね。

「お前には見えないのか? よく、見てみろ。
お前にもはっきりと見えるはずだ。
彼女の足に、子供が写っているじゃないか」

そう言い、おじさんは写真を指さしたんだ。
僕は、背筋がぞっとしたよ。
何か、得体の知れないものがその写真にいることはわかった。
それでも、子供の霊なんか見えやしない。
写真の彼女には変な噂もなかったし、至って明朗活発な子だった。

そんな霊に呪われるとは思えないし、僕は、目を皿のようにして、その写真に見入ったよ。
すると、どうだ?
「あ!」
僕は、思わず声を漏らしたよ。

何と、見えるじゃないか。
確かに、この写真は呪われていた。
彼女の足には、しっかりと子供がくっついていたんだ。
離れないよう、しっかりとね。

君には、見えないかい?
膝の辺りだよ。
ほら、膝にしっかりと子供がくっついているじゃないか。
その子供の名は、膝小僧。

……膝小僧。
膝についている子供だから、膝小僧。
どうだ、怖いだろう。
…………………………つまらない?
1.つまらない
2.とても怖かった