学校であった怖い話
>一話目(細田友晴)
>B4

いっしょに逃げてきた、戦友みたいなものだもんな。
僕は、迷わず中野を助けに戻ったよ。
助け起こそうとしていると、手が追いついて来た。
とっさに、僕は胸ポケットからシャープペンを抜き出したんだ。
そして、中野の背中に伸びた一本に、思いっきり突き立てた。

ザクッという、嫌な感触だったよ。
まるで、本物の人間の腕みたいだった。
やっぱり痛みは感じるようで、手はうねうねとのたくった。
まわりの手も、ひるんだみたいだった。
僕たちは、その間に、急いで校庭に飛び出したんだ。

弱い陽射しがそそぐ校庭は、とっても平和な感じで、今までのことが悪夢だったような気がしたよ。
僕たちは顔を見合わせて、それから校舎を見上げた。
その時だったよ。

ズオッという鈍い音がして、窓という窓からたくさんの手が出てきたんだ。
それはまるで、巨大なトコロ天が、にょろっと押し出されたみたいだった。
数え切れないほどの手が、僕たちに向かって手招きしていた。

…………それから後は、よく覚えてない。
どうやら、気を失っちゃったみたいでね。
先生が、校庭で倒れている僕たちを見つけてくれたそうだよ。

中野が、その後どうしたかって?
さあ、再試験はいっしょに受けたんだけど。
気の弱そうなヤツだったから、怖くて来られなかったのかもしれないなあ。

でも、僕もあれっきり、あの手を見なくなったし……。
僕たちのことはあきらめて、他の獲物を狙ってるんじゃないかって、思ってるんだけどね。
僕の話は終わりだよ。
次は誰かな?


       (二話目に続く)