学校であった怖い話
>一話目(岩下明美)
>H8

「僕やクラスメートと友達になるには、霊にならなきゃならないなんて……。
そんな考え方ってないよ」
僕は、内山君の目をまっすぐ見ていった。
彼は彼なりに真剣だったに違いない。

それなら僕も、よく考えて真剣に答えなければならない。
「今僕は、内山君と友達にはなれない。
内山君、みんなと友達になりたいっていってても、その一方でまだクラスメートに悪霊がついているなんて考えていたら、君と本当の友達になれる人はできないと思うよ。

でも、誤解しないでほしいんだ。
内山君は、辛くても毎日学校にきてたよね。
お母さんに心配はかけまいとしていたよね。
そんな内山君となら、僕は友達になれたと思う。
それなのに僕は、いじめを見て見ぬふりをしてしまった……。

もっと早く、いろんな話をしていればよかった。
本当にごめん……!」
僕は、内山君の目を見続けた。
内山君も、目をそらさない。
まるくて大きな目だ。
内山君は、泣いていた。

泣きながら、『すうっ』と消えていった。
僕はこめかみを押さえながら、大きく目を開いた内山くんの残像を思いうかべていた。

「坂上……」
誰かが言った。
「今の話は本当か?
本当に内山という人が、
ここに来ていたのか……?」
僕は、黙って席についた。
席はじっとりと濡れていた。
内山君の、涙だろうか。

岩下さんは、小さな声で言った。
「私は、内山君が言ってたことを信じてる。
悪霊は、確かにいたのよ。
悪霊にとっては、たあいもないいたずらだったのよ。
でも、内山君にとっては……。
だから、気を付けなきゃ。
この学校には確かに、悪霊がいるの……」

僕達は、顔を見合わせた。
みんな、不安な表情をしている。
岩下さんが言った。
「私の話はこれで終わり。
……次は、誰の番?」


       (二話目に続く)