学校であった怖い話
>一話目(岩下明美)
>I7

「やめてくれ!!」
僕は、ありったけの声で叫んだ!

しかし、彼女はやめなかった!
僕は、120ポイントのダメージを受けた!
「内山君は、あなたしか見えなかったの!」
250ポイントのダメージ!
僕は、死んでしまった!

……などと考えている場合ではない。
今のは、どういう意味だろう。
僕は、真剣にならなければならない時に、思わず間のぬけたことを考えてしまう所がある。
そういう性格は、人には理解できないだろうか。

たとえば、何か失敗をして、誰かに怒られている時に苦笑いをしてしまうような、そんな感覚だ。
真面目にならなければいけないのに、顔が緊張でニヤけてしまう時のような、そんな感覚なのだ。

「やだ、何ニヤけてるの?」
彼女が言った。
ニヤけている?
ニヤけてなどいない。
心を読まれた気がして僕は、一瞬ヒヤリとしたが、ただ黙って彼女の目を見つめた。

彼女の目は、僕を見てはいなかった。
「言ったでしょ。クラス全員に悪霊がついてたって……」
彼女のうつろな目は、僕の肩越しに何かを見ているようだった。
「いるのよ。あなたの後ろにも……」
彼女は、静かに立ち上がった。

「あなたの後ろで、悪霊が笑っているわよ……」
彼女が歩いて来る。
僕の方に、歩いて来る。
しかしその目は、僕の目を見ていない。
僕の肩越しに、何かを見ている……。

「内山君は、あなたしか見えなかったの。
だってあなたについてた悪霊が、内山君に話しかけたんだもの。
安心しろって。
今度は内山君に取り付いてやるからって。

そしたらもう、いじめられなくなるよって。
そうして今度は、他の誰かを、
つまりあなたを、いじめてやれって………。

だから内山君は、好きになったの。
あなたを。
内山君を、悪夢から解放してくれる、あなたを………」
彼女の手が伸びてきた。
彼女の手が、迷わず僕の肩に伸び……。

「なんて顔してるの? 冗談よ」
彼女は、僕の方をぽんとたたいた。
「僕も悪かった、って気持ち、忘れないで。
内山君は、悪霊が取り付いたんだって言うけど……。
人が何かをして、それをいちいち他のもののせいにしてたら、いいことはないわ。

内山くんは、まだ毎日学校に来ている。
でも今のままだったら、
いつか恐ろしいことが起こるかも……。
恐ろしいことって何かって?
……自分で考えて。
それくらい、考えられるでしょ。

さてと、私の話はこれで終わり。
悪霊のいたずらの話は、これで終わりよ。
……えっ?
この話は、本当に悪霊のせいかどうかわからないって?

じゃあ、次の人の話を聞きましょうか。
……だいじょうぶ。
記事になりそうな怖い話なんて、この学校にはざらにあるんだから……」


       (二話目に続く)