学校であった怖い話
>一話目(福沢玲子)
>A4

逃げなきゃ!
つい、そう思っちゃって……。
私、逃げ出したの。
早苗ちゃんは、追いかけてこなかったわ。
でも、そのエクトプラズムが追いかけて来て……。

私を追い越して、どこかへ行ってしまったの。
体育の授業を抜けて長い時間がたっていたから、終わりのベルが鳴ってね。

そのまま教室に戻ったら……。
エクトプラズムが、私のいすに座ってたの。
もう一度逃げようとしたら、私の首にからみ付いてきて……。
苦しかったわ、息ができなかった。
それでも逃げようとして、とにかく足を踏み出そうとしたら……。
エクトプラズムが、目の中に入ってきちゃったの。

それからエクトプラズムは、ずっと目の中から出てこないの。
だから、時々目がすごく痛むんだ。
まあ、痛いだけなんだけどね。
今も、ちょっと……。

あ、ごめんね。
……知ってる?
霊ってね、二つのタイプがあるんだって。

一つは、さる者は追わずのタイプ。
霊を見て逃げる人がいたら、ほおっておくってタイプよ。
もう一つは、逃げれば逃げるほど追いかけて来るタイプ。
早苗ちゃんのエクトプラズムは、追いかけてくるタイプの霊だったの……。
そういう例に出会ったら、逃げちゃいけないの。

いい?
逃げちゃダメよ。
今、私の身体の中に、さっきの話のエクトプラズムが入っているんだけど……。
もし目の中から出てきても、けっして逃げないでね。
逃げたら……知らないよ。
私は、逃げてもらった方が都合いいけどね。

……私の話は、これで終わり。
次は、誰の番?


       (二話目に続く)