学校であった怖い話
>一話目(福沢玲子)
>C6

そうだよねえ。
実際に見ないと
信じられないよねえ。
でね、早苗ちゃん、ご飯のときにお祈りするって言ったじゃない。
私、何をブツブツしゃべっているのか、そーっと近づいていって、聞いてみたんだよ。
そしたらさあ、なんて言ってたと思う?

「おやおや、今日もおいしそうな、お弁当だこと」
とか
「わしゃあ、幸せもんじゃなあ」
とか、しゃべってるのよ。
それも、早苗ちゃんの声じゃないの。
違う人の声なのよ。

私、早苗ちゃんが誰かのものまねしてるのかと思ったら、そうじゃないのよね。
よく聞いたら、いくつもの声が同時に聞こえるのよ。
一人の声じゃなくて、何人もがいっぺんに、がやがやとしゃべってるの。
私、早苗ちゃんの顔を覗き込んだの。

そしたらさあ、ちょっと開いた口もとに、人間の顔が見えるのよ。
マッチ棒の先のような小さな人間の顔。
二十個ぐらいあったかしら。
それが、じーっと、お弁当を見てるじゃない。
その顔が、口々に好きなことをしゃべってたのね。

私、また動けなくなっちゃって。
その時、突然早苗ちゃんが私の手を握ったの。
そして、私のこと見て微笑むのよ。

「今、おばあちゃんが言ってたよ。今度、玲子ちゃんは一人の男の子に会うんだって。その男の子は、今とても危険な位置にいるの。だから、気をつけるように、玲子ちゃんに教えてあげなさいって。気をつけてね、玲子ちゃん。その男の子、坂上君っていうらしいから」

……これで、私の話は終わり。
坂上君。
こうしてあなたに会えたってことは、偶然じゃないわよね?
あなたは信じないと思うけど、早苗ちゃんは忠告してたわよ。
あなた、
何か秘密があるんじゃない?

違う?
まあ、何があるか知らないけどさ。
気をつけるといいよ。
私には、詳しくわからないから。
じゃあ、次は誰の話かな?
楽しみ……うふふ。


       (二話目に続く)