学校であった怖い話
>二話目(荒井昭二)
>C6

「ここで、侵入者と張り合ってもどうにかなるもんじゃない! ここはとりあえず逃げねば!」
桜井先生は、走り出しました。
「あの突き当たりを曲がって、階段を下りればすぐ出口が見えるはずだ!」

サンダルをはいてきたので、ガラスの破片が入り込んで足が切れていますが、そんなことは気にしていられません。
壊れかけた校舎の、木の破片が散乱していて足場は非常に悪くなっています。

「あっ!」
思わず木片に足を取られ、転んでしまいました。
「くうっーーーー」
自分の運の悪さに、無性に腹が立ってきます。
「もう、こうなったらヤケだ!」
桜井先生は、振り向き様に懐中電灯を向けました。
そこには……。

「うぎゃーーーーーーーっ!」
夜中の学校に、桜井先生の悲鳴が響き渡りました。

……次の日の朝でした。
校庭をふらふらと当てもなく歩く桜井先生が発見されたのは。
懐中電灯の明かりをつけたまま、酔っぱらいのように千鳥足で校庭をぐるぐると、さ迷っていました。
口からはだらしなくよだれを垂れ流し、髪は真っ白に染まり、顔は一気に三十才も年を取ったかのように老け込んでいました。

そして、
「……あいつは、私のお友だち。
……私も、あいつのお友だち。
……みんなで死のう。
……楽しく死のう」
と、不気味な節に乗せて歌っていたそうです。

桜井先生は、治療のため病院に入りました。
治療はなかなかはかどらず、ほとんど回復の見込みはないそうです。
そして、今もあの歌を口ずさんでいるとか……。

いったい、桜井先生は、何を見たんでしょうか?
よっぽど恐ろしいものを見てしまったんでしょうか。
そして、そいつは今も旧校舎に潜んでいるんでしょうかねえ。

もうすぐ旧校舎が取り壊されてしまったら……。
そいつは、いったいどうなってしまうんでしょうか?
……僕の話はこれで終わります。
ありがとうございました。


       (三話目に続く)