学校であった怖い話
>二話目(荒井昭二)
>D6

「ええい、ままよ!」
桜井先生は、振り向くとそのまま飛びかかったんです。
「うっ!!」

明らかに、そこには人が立っていました。
その人物を、しっかり桜井先生は抱きしめている状態です。
先生は、ここまでちゃんと自分の思惑通りの場所に侵入者がいるなどとは思っていなかったので、驚くと同時にそのまま動けなくなってしまいました。

そいつは、思ったより貧弱な体つきで、ちょっと湿っている、ごわごわしたカビ臭い物を着ているようです。
「もう、だめかもしれない! やられてしまう! ……?」
気味が悪いことに、そいつは何もしてこない……。
先生もそいつも、しばらくその体勢を崩さずにじっとしています。

そうしているうちに、なにかだんだんと向こうから抱きしめてくるような感じです。
「な、なにをする!!」
どんどん、締めつけてきます。
苦しくて、息が出来ない。
しまいには、ものすごい力のせいで背骨がきしんできそうです。

こんなに、貧弱な体のどこからこんな力が出るのでしょうか。
「ぐおおおーーー!」
先生は苦しさの中で、侵入者の顔を確かめないといけないと顔を動かしました。
しかし、どうしても顔が見えず、白髪混じりの、ざんばら髪しか見えません。

すると、侵入者は顔をくるりとこちらに向けました。
「!!」
先生は背中に氷を入れられたように、凍りついてしまいました。
侵入者の顔は、白骨だったんです。

しかも、そのガイコツの目の中には焦点の合わないような目玉がこちらを恨めしそうに見つめています。
「俺を、暖めてくれ……。寒いんだ……。行く場所がないんだよ……」

先生は、そのまま気を失ってしまいました。
翌朝、他の先生に発見されたのですが、体中に、ミミズ腫れの引っかき傷がついていたそうです。
精神的に激しいショックを受けた先生は、治療のため病院に入りました。
治療は、なかなかはかどらず、回復の見込みはないそうです。

そういえば、桜井先生体温は普通の人より上がらず、いつも震えているということです。
後で聞いた話ですが、この辺りは昔、古戦場だったそうです。
その戦死した、成仏していない霊が、桜井先生の血の通っている身体がうらやましくて出てきたんではないでしょうか。

見える人には、見えるそうだけど……、この学校には、想像できないくらいの霊がうごめいているっていいますしね。
……僕の話は、これで終わります。
ありがとうございました。


       (三話目に続く)