学校であった怖い話
>二話目(細田友晴)
>B7

「……わかりました。そういう話だったら、僕も何もいうことはありません。お騒がせしました」
みんなも、僕の言葉にうなずいてくれた。
比田先生は、ほっとしたのか笑顔を見せてくれた。
「そう、ありがとう、みんな。……実をいうとね、あのトイレの染みをなめさせられた子って私なのよ」

比田先生は、高校生のころ、いじめられっ子だったそうだ。
それでも、頑張って先生になった。
それで、今はいじめをなくそうとして生徒指導という役目をかってでたんだよ。

比田先生が、そんなことを告白するものだから、僕たちはもう、あの染みの話を蒸し返すわけにはいかなくなってしまった。
「みんな、いい子ね。引き止めてしまって悪かったわ。もう遅いから、気をつけて帰るのよ」

比田先生は、そういうとあのタオルを大事そうに抱えて、生徒指導室から出ていった。
僕は、その時見えたんだ。

あのタオルがめくれて、その中に鉛色に光る刃が入っていたのを。
一瞬のことだから、僕の見間違いかもしれない。
けれど、もしあれが包丁だったら、比田先生は、何をするつもりだったんだろう。

まさか、僕たちがあの染みについて拘っていたら、タオルの中身を使うつもりだったんだろうか?
……僕たちを殺すために。
なーんて、そんなことあるわけないよな。
あの比田先生に限ってさ。

……でもね、今さらながら僕は思うんだよね。
もしかしたら比田先生は、嘘をついたんじゃないかってね。
比田先生が、いじめられっ子だったって話。
そして、西条といういじめっ子が、あの染みの呪いにあって学校をやめてしまったって話。

そもそも、あれ全部が作り話だったんじゃないかな?
二十年前に、そんなことはなかったんだ。
何となくだけど、最近そんなことを思ってしまうんだよ。
なぜ、比田先生が嘘をついたかって?
さあ、それは僕にもわからない。
ただね、何となくなんだ……。

比田先生は、あの染みを守らなければならない理由が、あったんじゃないか?
あの染みを守るために、僕たちにあんな嘘をついたんじゃないか?
そんな気がしてならないんだ。
僕は男性だから、あれ以来あのトイレには入っていない。

でもね、確かに邪悪な霊気を感じたんだよ。
ものすごい邪悪な霊気をね。
それは、嘘じゃない。
神に誓っても嘘じゃないよ。
あの染みがいい霊だなんて言った比田先生が、どうしても納得いかないんだよね。

あの染み、何か秘密があるんじゃないかなあ。
そして、比田先生にもさ。
君も、いつかは比田先生と話す機会があるんじゃないか?
その時は……気をつけたほうがいいかもよ。
何かありそうな気がするからさ。
ま、あくまで、僕の推測だけどね。

これで、僕の話は終わりだよ。
三話目は誰が話すのかな?


       (三話目に続く)