学校であった怖い話
>二話目(細田友晴)
>H7

目の前で人が殺されるのを、黙って見てるわけにはいかないじゃないか。
僕は、先生の腰に飛びついた。
でも髪の力は強くって、僕ごと引きずって行くんだよ。
このまま、僕も壁に引き込まれるんだろうか……という不安が、胸をよぎった瞬間。
僕の肩に、冷たい手が置かれた。

振り向くと、女の子が後ろに立っていた。
おおいかぶさるように僕をのぞき込む。
青白い顔を見れば、幽霊だってことは一目瞭然だったよ。
女の子のくちびるが動いた。

『ソ・ノ・テ・ヲ・ハ・ナ・シ・テ』
……その手を放して。
壁に埋まっているのは、彼女の体なんだ!
僕は、思わず手を放した。
その途端、芦村先生の体は宙に浮いた。
そして、アッという間に個室の壁に引きずり込まれてしまったんだ。

固いはずの壁が、ゼリーみたいに見えたよ。
女の子は満足そうに微笑んで、消えた。
悪霊には見えなかったな。

……だから、僕は誰にも、何にも言わなかったんだ。
殺された女の子が、犯人に仕返しをしただけだもんね。
そう……それっきり、芦村先生の姿は消えたんだよ。

でもね、あの染みには、今でも霊気がこもってるんだ。
いや、恨みを晴らしたんだから、もうあの女の子じゃないよ。
僕はね、芦村先生じゃないかと思うんだ。
あんなに、自分は悪くないっていってたんだもの。
きっとまだ、この世に未練があるんじゃないかなあ?

……僕の話はこれで終わりだよ。
次の人は誰だい?


       (三話目に続く)