学校であった怖い話
>二話目(細田友晴)
>I7

新米の米山先生は、頼りないところもあるけど、年齢が近いせいか一番信頼できたんだ。
僕たちが事情を話すと、思った通り、ちゃんと聞いてくれた。
そして、いっしょにトイレに行って見てくれるっていうんだ。
もちろん、喜んでついていったよ。

壁の染みを見ると、先生は眉をくもらせた。
多分、先生も霊感があったんだろうね。
「何だか、嫌な感じがするな……」
とか言いながら、染みに触ったりしてた。

ところが、そのうち、とんでもないことを言い出したんだよ。
「よし、先生が確かめてみよう!」
なんてね。

僕は必死で止めたよ。
危険なことはわかってるんだからね。
でも、先生は聞いてくれなかった。
「大丈夫、ちょうど今夜は宿直だから、絶好のチャンスなんだ」

……結局、僕たちは先生を置いて、家に帰ったんだよ。
次の朝は、さすがに早く目が覚めた。
米山先生のことが、気になってたんだ。

登校してすぐ、職員室に行くと、米山先生はちゃんといた。
ホッとしたな。
夜のうちに、消えてしまったんじゃないかと思ってたもんだから。
僕は米山先生の肩を叩いた。

「どうでした、先生?」
振り向いた先生と目があった瞬間、僕は悲鳴をあげそうになった。
なぜかって?

黒目の部分が、どろっとした金色に濁っていたからさ。
そんなの、生きている人間の目じゃない。
僕の顔色を見て、先生がニヤリと笑った。
その表情は、僕の知ってる米山先生とはまったく別人のものだった。
僕は、あわてて職員室を飛び出したんだ。

まわりの先生たちが騒ぎださないのが、不思議なくらいだったよ。
……でも、しばらくして気づいたんだ。

どうやら、普通の人には、米山先生の異常さがわからないようなんだ。
つまり、霊感の強い人間が見た時だけ、目が金色に見えるらしいんだな。

僕はあれから、米山先生と二人っきりにならないようにしてるよ。
今度、先生の目を正面から見てごらんよ。
君は霊感が強そうだから、きっと、僕と同じものが見えると思うんだけどな。

……そうそう、壁の染みだけどね。
実は、あれから一度だけ、あのトイレに忍び込んでみたんだ。
そうしたら……声が聞こえるんだよ。
あの染みから、すすり泣くような声がね。
それが、米山先生の声に似てたって言ったら…………君は信じるかい?

僕の話は終わりだよ。
次は誰かな?


       (三話目に続く)