学校であった怖い話
>二話目(岩下明美)
>C13

あんたは、彼女を振り落とした。
そして、おもいきり走った。
「逃げなくては!」
そればかり思ってた。
走って、走って、走って……。
彼女は追いかけた。
うらみの言葉を吐きながら。

あんたは走った。
彼女の言葉なんか、無視して走った。
………。
いつしか、彼女の声は聞こえなくなった。
そしてあんたは、落ち着いて周りを身まわした。
そこはただの廊下。
誰もいない、ただの廊下……。

あんたは、ゆっくりと歩いた。
周りを気にしながら。
しばらく進むと、廊下の終わりが見えた。
出られる。
この廊下から出られる。

あんたは、学校を出て家に帰ったの……よかったわね。
坂上君。
あなたは無事に帰ることができた。
うふふ……。

あなた……今の私の話をどう思った?
誰かが体験した話だと、本当に思った?
今の話は、誰かの話なんかじゃない。
あなたの話よ。
あなたは体験したはず。
永遠に続く廊下を。
女の子をおぶったことを。

これは、そういう生命を持った話なのよ。
あなた、一年E組っていってたわよね?
確か、あの教室って三階よね。
長い廊下の端にある、あの教室がE組じゃなかったかしら。
今のは、そこの廊下の話よ。
あの廊下の話をすると、聞いている人は幻を見るっていうわ。

どう?
あなたも、見たでしょう?
廊下にうごめく影や女の子は、私の作り話。
でも、それも見えなかった?
……見えたわよね。
あの廊下は、空想を現実にする力を持っているのかもしれない。
うふふ……。

あの廊下には、何かがあるわ。
あなたも、そう思うでしょ?
廊下の幻を見たなら、そう思うわよね。
そうそう、一言だけいっておきたいんだけど………。
あなた、約束を守る人だっていってたのに、彼女との約束をやぶったわね?

私、そんな人は殺すっていったわよね?
こんなことまで現実にならなきゃいいけど。
うふふ……。
私の話はこれで終わり。
次は、誰の番かしら?


       (三話目に続く)