学校であった怖い話
>二話目(岩下明美)
>Q5

あなたなら、そう答えてくれると思ったわ。
うふふ……。
じゃあ、話を始めるわよ。

これはね、ある一人の男子生徒が、偶然であってしまった悲劇のお話よ。
その日、彼は、補習で遅くまで残されていたの。
そうね、名前は……そう、仮にこう呼びましょう。
坂上修一君。
いい名前でしょ?

ごめんなさいね。
私も、その男子の名前を知らないの。
だから、あなたの名前をつけさせてもらうわ。
坂上修一君。
……いい名前だわ、本当に。

補習はね、プリントを渡されて、その問題が解けた人は帰っていいというものだったわ。
結構難しい問題が、何問も載っていてね。
簡単に解けるようなものじゃなかったの。

もともと、補習を受けるような人たちでしょ。
あまり、勉強が好きというほうじゃなかったのね。
だから、適当な答えを書いて、先生に見せに行ったわ。

それで先生の指示を仰いで、さっさと帰っていったの。
その辺は、先生もわかっていたんでしょうね。
まあ、形だけの補習だったのね。
でも、彼だけは違った。
まじめにプリントに向かったわ。

約束を破るようなことはしない性格だったの。
たとえそれが先生であろうと、約束したら守らなきゃね。
まるで、本当にあなたみたい。
だから、彼は一人で教室に残って、最後まで解こうとした。
どんなに考えても、ヒントさえわからない問題をね。

「何だ、お前、まだ残ってたのか? 忘れてたよ。もう、帰っていいぞ、坂上」
先生は、もうてっきり全員が帰ったと思い込んでたの。
教室の明かりが見えるし、不審に思って覗いたら、まだ一人残ってた。
ひどい話よね。

まあ、先生のお許しが出たわけだし、帰る用意をして、ふと周りを見たら、もうすっかり暗くなっていたの。
辺りもシーンと静まり返ってね。
誰もいなかった。
たった一人、暗い学校に取り残されたの。
今にも消えそうなほど薄暗い蛍光灯が、弱々しく灯っているだけ。

カッカッカッと乾いた足音が響くだけでほかの音は何も聞こえない。
放課後の校庭で遊ぶ学生たちもクラブ活動に汗を流す学生たちももう誰も残っていなかった。
ふと、時計を見ると八時半。
自分でも驚くほど、遅くなっていた。
彼の教室は、新校舎の三階にあったの。

目の前には二階へ続く階段、そしてまっすぐ伸びた廊下の先には、もう一つ二階へ続く階段があったわ。
どっちの道を選んでも、校門までの距離はさほど変わらない。

あなただったら、どちらを選ぶかしら?
1.目の前の階段を下りる
2.まっすぐ伸びた廊下の先にある階段を下りる