学校であった怖い話
>三話目(荒井昭二)
>F13

「やめましょう……」
僕は、疲れはてていた。
これ以上続けるわけにはいかない。
このままでは、自分の生死も危ぶまれる。
そんな気がしてならなかった。
僕達は、そのまま解散した。

……次の日、僕は部長にことのいきさつを話し、七不思議の特集を取りやめにしてほしいと頼んだ。
最初は半信半疑に聞いていた部長も、消えた生徒の話が本当だと知ると、僕のいい分を通してくれた。
これでいい。
これでよかったんだ。

…………月日は流れ、僕は二年生になった。
そして、新聞部部室で私物の整理をしている途中……。
一冊のノートを見つけた。
その表紙には、相沢信彦という名が書かれていた。
この名前は……。

僕は、そのノートを開いてみた。
しかし、そこには白紙のページが続くばかりだ。
「何も書かれてな……あっ!」
ノートの最後のページに、僕の名前が書かれている。

このノートは、何を意味するのだろう。
じっと見ていると、その僕の名前が、じわじわと消えていった。
そして、そこには新たな文字が浮かびあがって……。

僕は、部室から逃げ出した。
ノートに現われたのは、こんな言葉だった。
「実験を始めましょう……」
あの日の怪談が、思いおこされた。

七不思議の話をやめて、平和になった気がしていたのは僕だけだった。
僕が話をやめても、霊現象自体は確かにこの学校に存在していたのだ。
そして次の犠牲者は……。

僕の後頭部に、激痛がはしった。

誰だ?
一体、何の為に……。
「実験だよ」
誰かの声が聞こえる。
「さあ相沢さん、実験を始めましょう……」

聞き覚えのある声だった。
意識がうすれていく僕の目に、あの日七不思議の怪談で会った人の顔がうつった。
あの人の名は、確か……。
荒井さ……。

「さあ、あなたにも、旅立つ時期がきましたよ。一緒に行きましょう。ほら……相沢さんもいるんですよ……」
荒井さんの肩越しに、大きなドクロが浮かんでいた。

逃げてはいけなかった。
中途半端な気持ちで、この学校の怪現象に、首をつっこむべきではなかったのだ……。
僕は、相沢さんの実験材料になるのだろう。
荒井さんがニヤニヤと笑っていた。

逃げられない。
この現実からは逃げられない。
僕が最後に見るのは空だろうか、地面に飛び散る血だろうか。
それは、すぐわかることだ。

後頭部に、再び激痛が走った。
………。
屋上からつき落とされることを考えながら、僕の意識は、静かにうすれていった……。


そしてすべてが終った
              完