学校であった怖い話
>三話目(荒井昭二)
>N7

バットで殴ったり、クロロホルムを嗅がせたりするのはもう試しました。
そこで相沢さんは、今度は獲物の首を絞めてみることにしたのです。

相沢さんは、呼び出した友達の首に手をかけ、一気に力を込めました。
友達は、信じられないといった顔つきで目を見開きました。
いえ、苦しくて目をむき出していたのかもしれません。

「満たされない。どうしても満たされないんだ……」
相沢さんはうわごとのようにぶつぶつと繰り返します。
そして……。

その場で、友人を殺してしまったのです。
「だめだ。これでは実験が行えない……」
相沢さんは、次の獲物を求めてふらふらと歩きだしました。
すると……。
前方に、人影が見えてきました。

三人います。
彼らは、学生服を着ているようでした。
相沢さんは、微笑みました。
次の実験材料が現れた。
……そう思ったのです。

彼はすでに正常な判断力を失ってしまっていたようです。
公園のごみ箱には、ジュースのビンが捨ててありました。
相沢さんはそれを手にとり、人影に向かって走りよったのです。
しかし、その時……。

何者かの手が、首に絡みつきました。
「な……!」
その手は死人のように冷たく、硬直したようにこわばり、筋がうきあがっていました。

「やめ……!」
相沢さんは、その手を振りほどこうとしました。
そして、必死で振り向いた瞬間……。

見てしまったのです。
たった今殺したはずの友人が、自分の首を絞めているのを……。
その顔には血の気がなく、目は殺された時のようにむき出されていました。
目だけが飛び出してきそうなほど、大きく、大きく見開かれていたのです。

相沢さんの首は、ものすごい力で締めつけられました。
手にしたジュースのビンが、力なく地面に投げ出されます。
彼はもう声も出せず、ゲップのような音を喉から発するだけでした。

前方にいた三人が、歩いてきます。
同時に、笑い声が聞こえてきました。
相沢さんのことを、笑っているような声でした。
三人は、目の前に来ました。
その顔は……。

相沢さんが以前殺した、不良のものでした。
みんな醜く顔をゆがめています。
それは、彼らが殺された時の表情そのものでした。
相沢さんは、死者に首を絞められ殺されました。

すべては、自分のまねいた結果です。
しかし、相沢さんもかわいそうな人です。
実験に対する欲望をあれだけ持っていながら、いざ自分が死ぬ時は、地ベタで絞め殺されてしまったのですから。

彼は、そのことを悔やんでいるに違いありません。
そうそう、この学校には相沢さんの霊がでるんですよ。
屋上から下を見下ろすと、地面に相沢さんの顔が浮かびあがるんです。
その顔は、絞め殺された時のように目を見開いているそうです……。

僕の話は、これで終わりです。
それでは、次の人の話を聞くことにしましょう。


       (四話目に続く)