学校であった怖い話
>四話目(新堂誠)
>A7

そう、戻って確かめにいったんだ。
すると、グローブは確かにそこにあった。
そして、奴は無性にそれをはめたくなってしまったのさ。

そのグローブは、実にしっくりと畑中の手になじんだ。
まるで、自分のためにあつらえたもののように。
なんだか変な気分になりながら、畑中はそのまま、みんなのところに戻ることにしたんだ。

すると……。
「畑中……おまえ、なにを手に付けているんだ……!?」
同級生にそういわれ、自分の手を見た畑中の目に映ったものは。

グローブじゃなかった。
手首からちぎれた血だらけの手が二つ、畑中の二つの拳をにぎっていたのさ……。
赤いグローブだと思っていたのは、赤い血を滴らせる手首だったんだよ。

「うわああーーーっ!!」
畑中は、叫びながら血だらけの手首を振り払おうとした。
すると手首は畑中の手を離れ、奴の顔にベシャッと張り付いたんだ。

その場にいた奴らは急いで助けを呼んだ。
そしてみんなが駆けつけると、畑中はこんなことをいっていたんだよ。
「俺が悪かった!
赤坂……俺が悪かったよ……」

それで、畑中達が赤坂を殺したということが部員にばれてしまった。
畑中達は退学になり、しかるべき処罰を受けたということだ。
それからのボクシング部は、しごきがなくなってな。

練習自体もあまりしなくなって、随分小さくなっちまった。
うちのボクシング部が寂れちまったのは、こういう事件があったからなのさ。
もちろん、表向きは殺人があったとか、赤坂の手首がでてきたからとかいうことを伏せてあるけれどな。

赤坂の死体は手厚く葬られたよ。
だが……。
今でも、ボクシングへの思いが消えないらしいな。
時々ボクシング部の試合中、現れるらしいぜ。
赤坂の霊がな。
出場選手のことを、うらやましそうに見ているんだってよ……。

俺の話は、これで終わりだ。
次の奴の話を、聞かせてもらおうか……。


       (五話目に続く)