学校であった怖い話
>四話目(荒井昭二)
>B7

ええ……その通りです。
僕は、恐怖のあまり思い切り叫んでしまったんです。
すると化け物は、僕に向かって進んでこようとしました。
その時……。

袖山君が、化け物をひきとめたのです。
「行かないで……」
毛布の中から、かぼそい声が聞こえてきました。
袖山君は、なぜ化け物をひきとめたのでしょう。
4番ベッドに寝てしまったものは、化け物に魅せられてしまうのでしょうか。

化け物は、袖山君の方を振り返りました。
そして僕を無視し、再び袖山君の腕をしゃぶりはじめたんです。
僕は、二三歩後ずさりました。
体が動くようになっていたのです。
「荒井くん、向こうに行ってくれないか」

袖山君の声がしました。
でも、はたしてこの場を去っていいものかどうか……。
僕は、そう思いました。
袖山君が、操られているような気がしたからです。
しかし……。
「早く行けよ!!」

袖山君がものすごい形相で怒鳴りました。
まるで、人が変わったようにです。
それで僕は、その場を去らざるをえませんでした。

僕が化け物を見た次の日、袖山君は学校に通ってきました。
これ以上ないくらい、虚ろな目をして。
そして、その後時々例の宿泊施設に忍び込んでいたようです。
更に、これが奇妙なんですが……。

先生方は、それを見て見ぬふりをしていたようなんですよ。
そして、袖山君は何日か後に行方をくらましてしまいました。
学校側は、
「袖山君は転校した」
といっていましたが、ちょっと信じられませんね。
いったい、どういうことなんでしょうね。

4番ベッドにでる化け物……。
あいつに、生徒をいけにえとして差し出していたということなのでしょうか。
………僕には、よく分かりません。

坂上君。
あなたも、今後あの宿泊施設を使うことがあったら、4番ベッドを使ってみてはいかがです?
僕のかわりに、この謎を究明していただけませんか……?
ああ、そうですか。
嫌なんですか。

まあ、所詮あなたは支配する側の人間ですもんね。
自分の手を汚してまで何かをしようとは思わないんでしょうね。
それでは、僕の話はこれで終わります。
僕が、サッカー部を辞めたのは、こういう事件があったからなんですよ。

あれは、実に不思議な出来事でした。
……次の人の話を聞きましょう。
さあ、どなたが話して下さるんですか?


       (五話目に続く)