学校であった怖い話
>四話目(岩下明美)
>A8

彼は、基本的には来る者こばまずっていう感じだったのでOKしたわ。
あの後だったから、ちょっととまどったけどね。
でも、そんな彼も彼だけど彼女も彼女よね。
あんなことされたのにまだ、彼のことが忘れられないのね。

そして彼は、彼女の肩に手を置いたの。
赤い傘と、青い傘が重なるように寄り添うわ。
そして唇も……。
その時、彼女はものすごい力で彼の首をつかんだのよ。

「うがっ!!」
彼は、彼女から離れようと一生懸命もがいたわ。
彼女も、彼の唇から離れようとしない。
彼女の力はものすごくて、逃げられそうにもない。
もう、気が遠くなりそうだ……。

そして、二人の傘がはらりと落ちたわ。
「うぎーーー!!」
そこには、顔中に赤いシミが浮き出た彼女の顔があったの!
赤い傘の色が顔にかかっていたので、今までわからなかったのよ。
そして、彼女はごふっごふっといいながら、なま暖かい液体を彼の口に流し込んだのよ。

何ともいえない、酸っぱいような生臭いような味……。
彼女は、だ液の糸を引いた唇を彼から離すとこう言ったわ。
「お前のせいだ!! 全部お前のせいだ!!
私のこの苦しみを味わえ!!」
彼女は笑いながら、彼をその場に残して去っていった。

彼の脇には、あの日咲いていたのと同じ色をしたあじさいが雨に濡れていたわ。
そして翌日、彼女はお父さんの仕事の都合で海外に引っ越していったの。

不思議なことに、翌日、彼女の赤いシミはきれいに消えていたらしいわ。
彼女は、なんでも特殊な体質だったらしくてね。

酸性の雨に長時間当たっていると、体中に赤いシミが出てしまうそうなのよ。
お医者様でも、その原因がよく分からないんですって。

でもね、雨に当たる時間が短かったり、少しの量の雨なら平気なんだそうよ。
ただ、長時間酸性雨に当たっていても手当てが早ければすぐ元に戻るそうなの。

普通の人は、そんなことにはならないわよね。
まあ、聞いた話だからどこまで本当かわからないけどね。
だから、彼女ずっと雨には気をつけていたらしいわ。
だけど、あの出来事があった日は、そのことも忘れてあそこで泣いていたのよね。

それでね、あの塚原君どうなったと思う。
かわいそうに、あの翌日から体中に彼女に出たのと同じ赤いシミができたんですって。
そのシミは、何をやっても消えないらしいの。

もちろん、もう前のようにちやほやしてくれる人もいなくなってね……。
さあ、彼は今どうしているのかしらねぇ。
やっぱり、彼女の呪いだと思うでしょ?

でも、よかったわね。
結局、彼女は彼に復讐を果たすことができたんだもんね。
やっぱり復讐はこうじゃないとね。
坂上君も気をつけなさいね。
女の子を物扱いしていると、後で必ずひどい目にあうわよ。
うふふふ。
さあ次の人は誰かしら?


       (五話目に続く)