学校であった怖い話
>四話目(岩下明美)
>D7

彼は、基本的には来る者こばまずっていう感じだったのでOKしたわ。
あの後だったから、ちょっととまどったけどね。
でも、そんな彼も彼だけど彼女も彼女よね。
あんなことされたのにまだ、彼のことが忘れられないのね。

そして彼は、彼女の肩に手を置いたの。
赤い傘と、青い傘が重なるように寄り添うわ。
そして唇も……。

その時、彼女はものすごい力で彼の首をつかんだのよ。
「うがっ!!」
彼は、彼女から離れようと一生懸命もがいたわ。
彼女も、彼の唇から離れようとしない。
彼女の力はものすごくて、逃げられそうにもない。

もう、気が遠くなりそうだ……。
そして、二人の傘がはらりと落ちたわ。
「うぎーーー!!」
そこには、顔中に赤いシミが浮き出た彼女の顔があったの!
赤い傘の色が顔にかかっていたので、今までわからなかったのよ。

そして、彼女はごふっごふっといいながら、なま暖かい液体を彼の口に流し込んだのよ。

何ともいえない、酸っぱいような生臭いような味……。
彼女は、だ液の糸を引いた唇を彼から離すと、

「お前のせいだ!! 全部お前のせいだ!!
こうしてやる……
こうしてやる!!」
といって、自分の手に力を込めたわ。
彼の首は、ミシッとと鈍い音を立てたわ。

彼は、彼女の手の中で力つきた……。
窒息死よ……。
彼は、通行人に発見されたんだけどね。
なんでも、彼の体中に赤くぶつぶつに膨らんだシミが浮き出ていたそうよ。

そして彼女はね、翌朝からきちんと学校に来たのよ。
なにくわぬ顔をしてね。
不思議なことに、赤いシミはきれいに消えていたの。

「ねえねえ、立花さん知ってるー?
昨日、塚原さん事故で死んじゃったんだってぇー。
かわいそぉー」
「ふーん。でも色々悪いことしてきたみたいだから、自業自得じゃないのかしらね? ふふふ……」

結局、彼がどうしてあんな状態で死んでいたのか誰もわからなかった……。
後で彼女が、こっそりと親友に話したんだって。
彼女の親友さえも、知らなかったことだったんだけどね。
彼女は、なんでも特殊な体質だったらしくてね。

酸性の雨に長時間当たっていると、体中に赤いシミが出てしまうそうなのよ。
お医者様でも、その原因がよく分からないそうなの。

でもね、雨に当たる時間が短かったり、少しの量の雨なら平気なんだそうよ。
ただ、長時間酸性雨に当たっていても手当てが早ければすぐ元に戻るそうなの。

普通の人は、そんなことにはならないわよね。
彼女、ずっと気をつけていたらしいわ。
だけど、あの出来事があった日は、そのことも忘れてあそこで泣いていたのよね。
でも、よかったわ。
結局、彼女は彼に復讐を果たすことができたんだもんね。

えらいわ。
感心しちゃうわぁ。
やっぱり復讐はこうじゃないとね。
坂上君も気をつけなさいね。
女の子を物扱いしていると、後で必ずしっぺ返しが来るわよ。
うふふふ。
さあ次の人は誰かしら?


       (五話目に続く)