学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>A7

ああ、強くなったさ。
あのトランプを使ってから、連戦連勝だ。
まるでトランプが、自分の主人を理解して、勝たそうとしてるみたいだった。
そのうち、その噂を聞きつけたんだろうな。
大倉がやって来た。

俺のトランプを見て、顔色を変えていたぜ。
きっと、同じものがあるなんて想像していなかったんだろうな。
それで、俺にいったのさ。
「お互いのトランプを賭けて勝負しよう」
俺は受けて立った。

へたをすればトランプを取られるのに、馬鹿だと思うか?
でも勝てば、大倉をへこましてやれる。
そんなことを考えるんだから、俺も根っからのギャンブラーなのかもな。

ルールはこうだ。
まず、ゲームはポーカー。
お互いのトランプを交換して、片方がシャッフルしてカードを配る。
その後、もう片方が裏返しのまま、カードを選ぶんだ。
なかなかフェアだろう?
それでもたぶん、勝ち数は五分五分だろう。

だから、ドローじゃなくなった時点で、勝ち越した方が二組のトランプをもらえることにした。
まずは、俺のトランプを大倉が配った。
もちろん、俺の勝ちだ。
やっぱりあのトランプは、主人が誰かわかってるんだ。
次に大倉のトランプを俺が配ったけど、大蔵の勝ちだったもんな。

しばらく均衡が続いた。
でも、何度目かのゲームで、大倉がニヤリと笑ったんだ。
俺のトランプの番だったし、ヤツが勝てるわけないのにな。
実際、そのときの俺の手札はキングのフォーカード。
自信満々で出してやった。

ところが、ヤツは嬉しそうに自分の手札を見せるんだ。
それが……なんだったと思う?

エース四枚とジョーカー。
エースのファイブカードだったのさ!
ジョーカーに描かれたドクロが、あざ笑っているように見えたよ。

大倉はニヤニヤ笑いながら、二組のトランプをかき集めた。
「選ばれたのは、俺の方だったな」
そんなことをいいながら、ヤツは浮き浮きと帰っていったぜ。

そして、それっきり学校に来なかった。
来れるわけないさ。
死んじまったんだからな。
……朝、大倉が起きてこないんで、家の人が見に行ったんだってよ。
そしたら大倉は、ベッドの上で死んでいた。
無惨な有様でな。

体は無傷なのに、頭部の皮がはがれて、中の肉までが溶けたように、きれいになくなってたらしいぜ。
つまり、首から上だけがドクロになってたんだな。

例のトランプのジョーカーみたいに。
そうそう、二組のトランプは、大倉の部屋にあった。
でも、半分ドクロだったはずの裏の絵がいつのまにか変わってたんだ。

左半分が女の顔で、右半分が男の顔になってるキメラにな。
店の親父が心配してたのは、このことだったんだ。
恋人同士の二組のトランプは、いっしょになりたかったんだろうよ。
……さて、大倉の顔がどこにいったか、わかるか?

どんなに鈍いヤツでも、もうわかるよな。
女ドクロと男ドクロ、そして大倉。
顔は三つあったんだし、三引く二は一だもんな。
そうさ、もう一組のトランプ。

その裏には、見慣れない男の顔が描かれていたんだ。
俺には、大倉にそっくりに見えたよ……。
さあ、これで話は終わりだ。
六話目に行こうぜ。


       (六話目に続く)