学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>B7

そうなんだ。
ちっとも強くならなかった。
でも、ギャンブルに強くなるなんて勝手にこっちが思ってただけだしさ。
店に文句いうわけにもいかないだろ。
納得行かないまま、そのトランプを使うのをやめてしまったんだ。

そんなある日、大倉がやって来た。
俺のトランプを見せろっていうんだ。
大倉のヤツと似てるって、誰かにいわれたんだろうな。
見せてやったら、顔色を変えてたっけ。

それで、そいつを売ってくれっていうんだ。
自分のトランプと同じ力を持っていると誤解したんだろう。
もちろん、売ってやったぜ。
俺は、ギャンブルに強くなるトランプだなんて、いわなかった。
大倉が勝手に思い込んだんだ。

俺は、こっとう品屋の親父と同じことをしただけなんだぜ。
ところが、金と引き替えにトランプを渡したとき。
絵の中の男の目が、キラリと光ったんだ。
そして、その小さな口も動いた。
「返済開始」
確かにそういったぜ。

次の日から、大倉はまた、ギャンブルが弱くなったんだ。
いや、前よりも弱くなったんじゃないかな。
ムキになって取り返そうとするから、もう泥沼だったぜ。
貯め込んだ金を吐き出しても、まだ足りないくらいさ。
さすがの大倉も、もうギャンブルをやらなくなった。

でも、そんなことじゃ済まなかったんだ。
それからしばらくして、大倉の親父の会社が倒産した。
しかも、借金の保証人になってたとかで、肩代わりまでさせられたんだ。
結局、大倉は学校を辞めたよ。
今ごろ、どこかで働いてるんじゃないかな。

ところで、あの時にトランプの男がいってた「返済」という言葉の意味なんだけどよ。
あれって、女の方のトランプで稼いだ金と同じだけ、大倉から取り上げるってことだったんじゃないか?
だから、俺のときは何も起こらなかったんだと思う。

でもさ、逆に考えれば、大倉はそれだけ儲けてたってわけだよな。
……そう考えると、あんまり同情する気も、なくなるか。
まあいいや。
おまえもトランプで遊ぶときは、よく裏の絵を確かめた方がいいぜ。
これで話は終わりだ。
お次へどうぞ……ってな。


       (六話目に続く)