学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>C7

ヤツは、必死に相手を捜し始めた。
ポーカーをやらなきゃ、生きていられないとでもいうようにな。
でも、ヤツが強いのはみんな知ってる。
誰も相手にならないさ。
そうしたら、ヤツはなんと!

金をばらまき始めたんだ。
大倉に勝ったら、賞金をもらえる。
それでいて、負けても金を払う必要はないっていうんだぜ。
正気の沙汰じゃないよな。
だけど、そのおかげで相手になるヤツが出てきた。
もちろん、大倉は強いからな。
金を取られたことはなかった。

そうなると、ムキになるヤツもいるもんさ。
朝学校へ来ると、すぐ大倉のところへ来る男がいたぜ。
名前は小林とかいったな。
とにかく授業時間以外、朝から晩までずっとポーカーだ。
見ている方が疲れたぜ。
でも、大倉は嬉しそうだった。

飽きもせずに、何百回、何千回とゲームを繰り返していたな。
ある月曜日のことだ。
小林が学校へ来なかったんだ。
意外だったな。
その頃の小林は、ポーカー以外に興味を示さなくなっていた。
風邪気味くらいで、ポーカーをやりに来ないなんて、信じられなかったんだ。

大倉に聞いたら、土日は大倉の家でポーカー三昧だったっていうじゃないか。
前の日までそんなに元気だったヤツが、いきなり倒れるか?
でも、本当にそうだったんだよな。

見舞いに行ったヤツの話じゃ、小林はえらく衰弱していたらしい。
カサカサした肌に落ちくぼんだ目。
髪の毛も半分以上白髪になって、バサバサ抜け落ちていたらしいんだ。
それで、遠くの病院に入院することになったんだよ。

そうなると、困るのは大倉さ。
また、ポーカーの相手を見つけなきゃならないんだもんな。
でも、小林の一件を知った俺たちはとてもそんな気になれなかった。

大倉が、小林に何かしたんじゃないかと思ったんだよ。
大倉はあせっていた。
しまいには、ポーカーにつき合っただけで、一回千円くれるっていうんだ。

そんな怪しげな条件ってあるかよ。
気味悪がって、みんな近寄るのも嫌がりはじめた。
そんなある日、俺は大倉に捕まったんだ。
ヤツは、とにかくいっしょにポーカーをやってくれっていうんだ。
ほっとくと、土下座もしかねない勢いだったな。

だけど俺は断った。
そしたら……。
突然、ヤツが悲鳴をあげた。
「もう駄目だ! タイムリミットだ!!」
そして倒れ込んだんだ。

あわててのぞき込むと、白目をむいてピクピクとひきつってた。
即座にヤバいとわかったね。
そのとき、ヤツから生気が消えた。
中に電気が灯ってたのが、パチンと消されたみたいだった。

ヤツが死ぬ瞬間だったのかな。
人が死ぬときって、スイッチをひねったように、あんな簡単にいっちゃうもんなんだな。
それから、うつ伏せの背中から、何かが抜け出した。
もやもやとしたそいつは、大倉から完全に抜け出すと、まとまった形になった。
なんだと思う?

半分が女で、半分がドクロの大きな顔。
そう、大倉のトランプの絵と同じさ。
そいつは俺を見てニイッと笑った。
そしてジワッと消えていったんだ。

空気中に溶け出すようにな。
……大倉は、もう事切れてた。
抱き起こしたとき、胸ポケットからバラバラとトランプがこぼれたよ。
それがさ……信じられるか?

裏側が真っ白だったんだ。
描いてあるはずのドクロ女が、一枚残らず消えていたんだよ。
……あのドクロ女、ギャンブルの女神だったのかな。
それとも悪魔か。
大倉は悪魔と契約していたのかもな。
それなら、小林がああなった理由もわかるような気がするしよ。

……俺の話は、これで終わる。
わかんないとこがあっても、俺の話がへたなせいじゃないぜ。
俺だって、誰かが説明するんなら、ぜひ聞きたいんだからよ。
まあ、そんなとこだ。
じゃあ、六人目だな。
誰だっけ……?


       (六話目に続く)