学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>F9

「すいません。お断りします」
「そうか……そうだよな」
新堂さんはガックリと肩を落とした。
本気で怖がっているようだ。
悪いけど、僕は笑いをこらえた。

だって、もしドクロ女が来ても、そんなに小さいのなら踏みつぶせるじゃないか。
でも、次の瞬間。
僕は凍りついた。

新堂さんの足元に、小さな生き物が見えたのだ。
ピンポン玉サイズの頭半分がドクロになっていて、もう半分は女の顔になっている。
トランプの女だ。
その目を見た瞬間、僕は自分の間違いに気づいた。
彼女たち相手に、抵抗なんてできるわけがない。

あの目。
見つめられたら、蛇ににらまれた蛙のように硬直してしまうだろうということが、直感でわかった。
そして、新堂さんが怯えている理由も……。
女はチョコチョコと移動して、見えなくなった。

でも、まだいる。
どうしたらいいんだ?
新堂さんに告げようか。
でも、それで怒って飛びかかってこられたらどうする?
僕は悩んだ。

それを、気まずさからと誤解したのだろう。
誰かが、僕の代わりにいった。
「さあ……最後の話だ」
機会を逃した僕は、沈黙を守るしかなかった……。


       (六話目に続く)