学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>G8

大倉がみんなに書かせてた、あの契約書だったんだ。
それも、一枚一枚にどこで手に入れたんだか署名者の写真入りでさ……。
それから、古ぼけた分厚い本もあった。
ファンタジーに出てくる魔法書のような……。

魔法書?
俺の顔色を読んだんだろう。
大倉が向き直った。
目がぎらぎらと光ってる。

「見られたらしょうがない。俺はこの契約書を代償に悪魔と取引をして、もっともっと賭事に強くなるんだ。学校の中だけじゃなく、もっとでかい勝負をしてやる!」
体が動かなかった。
金縛りにあったみたいだった。

大倉は儀式を始めた。
何かの粉で魔方陣を描き、呪文を唱える。
すると、暗い教室の中にもやが立ちこめてきたんだ。
その中心に、なんだか邪悪に光る三つの目があった。
大倉が契約書を掲げた。
「ここに、魂を捧げるという契約書があります」

いけない!
俺はあせった。
大倉は本気だ。
契約が済めば、俺も貢ぎ物にされるだろう。
俺は、全身に力を込めた。
「この契約書を代償に、俺を世界一賭けに強い男に……」

ピクッと指が動いた。
それをきっかけに、俺は体の自由を取り戻したんだ!
チャンスは今しかない!
俺は足を伸ばし、魔方陣の表面をこすった。
粉が舞い上がって、魔方陣が欠けた。
次の瞬間。

「ぎゃああああっ!!」
太い腕が伸びて大倉をつかむと、そのまま、もやの中に引き込んだ。
その数秒間に、俺は急いで魔方陣の中に入って、欠けた部分を描きなおしたんだ。
間に合わないかと思った。
心臓が止まりそうだったぜ。

そのすぐ後に、もやの中から声がした。
「望みをのべよ……」
重々しい声だった。
俺の望みは、たった一つだったさ。
「今すぐ帰ってくれ!!」

すると、もやは消えた。
ホッとしたら、腰が抜けてさ。
しばらく動けなかったな。
大倉は行方不明ってことになったよ。
本当のことなんていえねえもんな。
まあ、ヤツも馬鹿だったのさ。
自業自得ってヤツだろ。
さあ、俺の話はこれで終わりだぜ。
いよいよ六話目だな。


       (六話目に続く)