学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>I7

ああ、大倉は学校に来なくなったんだ。
それどころか、部屋からも出なくなったんだとよ。

家の人が心配して覗いてみたら、ヤツはトランプをベッドの上に敷き詰めて、その上に寝ているじゃないか。
ウットリと、気持ちよさそうにな。
でも、病気ではなさそうだしっていうんで、そのまま放っておいたらしいんだ。

食事も、部屋の外に置いておけば食べているようだったし。
でも、ある日のことだ。
親戚に不幸があったとかで、大倉の家族全員で出かけることになったんだよ。
ドアの外から、母親が声をかけた。
「一万円置いておくから、出前でもとって食べるのよ」

……まあ、大体こんなことだったろうな。
どこの家でも、お袋なんて同じことをしゃべるもんだぜ。
それで、出かけた。
向こうで二泊してから帰ってきたらしい。
ところが、金は出かけたときのままだ。

端がギザギザにちぎってあったらしいけど、とにかく、置いた位置にあるんだよ。
心配になって、大倉の部屋に行ってみた。
すると中から、カサカサという音が聞こえるじゃないか。
なんの音かと思って、開けてみたんだな。
そしたら……。

ベッドの上には、白骨死体があった。
そして、その骨の間をちょろちょろと走っているのは、あのトランプの半分ドクロの女たちだったんだ。
ピンポン玉くらいの大きさの、頭の下には、小さな触手がびっしりと生えていた。
それで移動するんだ。

まだ骨にこびりついている肉のかけらを、小さな歯でかじっている。
家の人は悲鳴をあげた。
その声に、女たちは一斉に振り向いた。
そして、ものすごいスピードで、窓から逃げていったんだ。
まるで潮が引くように、ザザーッとな。

後には大倉の白骨死体と、女たちが抜け出した後の真っ白いトランプだけが残されていたそうだ。
きっと、食事を食べていたのは大倉じゃなくて、あの女たちだったんだ。
家族がいなくて食事が用意されなかったから飢えた女たちは、大倉を食ってしまったんだろうよ。

大倉が逃げようとしなかった理由?
わかんねえよ。
あの女たちに魅入られたのかもな。
けど、トランプから抜け出したヤツらは、今どこにいるんだろう。
あんなのが潜んでるかもしれないと思うと、暗闇が怖くてさ。
……笑ってもいいぜ。

とにかく、これで話は終わりだ。
さっさと次も終わらそうぜ。
外も暗くなったしよ。


       (六話目に続く)