学校であった怖い話
>五話目(新堂誠)
>P3

そういう奴は気をつけろよ。
大倉の世話になるからな。
大倉ってのはさ、学校で高利貸しをしててな。
それでかなり儲けてるんだよ。
もちろん、犯罪だぜ。
許されることじゃない。
でもな、利用する奴が多いんだよな。

高利貸しといっても、ただ金を貸して利息を取るだけじゃない。
学校で、数々の悪どい商売をしてるのさ。
物の売買から、宿題の請負やギャンブルの元締めまで。

商品に関していえば、コンピューターでもスキー板でも、大倉に頼めばどんなものだって安く手に入るって話だぜ。
もっとも、全部万引きしてきたものらしいけどな。
それにすごいのが、ギャンブルの元締めだ。
どんなのか、わかるか?

例えば、どこかでケンカが始まるだろ?
すると、どっちが勝つのか配当を決めて、みんなに賭けさせるのさ。
それで、その収益をいただく。
損をすることがあるのかって?
いや、大倉に限ってはないね。

どうも、そのケンカってイカサマらしいんだよな。
ケンカをする二人はグルで、最後はどっちが勝つか、最初からシナリオができてるのさ。
それで、大倉にとって利益の大きい結末に、自由に変えられるって寸法だ。
ケンカとは名ばかりのショーだよな。

まあ、みんなそのショーを楽しんで見てるんだから、見物料ってとこか。
だから、あいつはかなり羽振りがいい。
不良連中にたかられるのかっていうと、そうでもない。

儲けた金で、用心棒を雇ってるぐらいだからな。
あいつが大人になったときのことを考えると、空恐ろしいぜ。
でも、きっとものすごい商売人になっちまうんだろうな。

それで、本業の高利貸しの話だ。
おっと、本業は学問か……。
一応、あいつも学生だもんな。
まあ、固いことは抜きにして、だ。
高利貸しってわかるよな。
金を貸して、それに高い利子を付けて、返してもらう商売だ。

トイチって知ってるか?
トイチってのは、十日で一割の利子を付けることをいうんだ。
そして、その利子を払えなければ、最初借りた元金に上乗せされて、どんどん借金が膨らんでいくって仕組みだ。
大倉は、えげつないぜ。
トイチで金を貸してるんだからな。

きちんと証文まで取るんだぜ。
しかも、このあとがすごい。
わざと利子を受け取らないのさ。
最初は、笑顔で近づいて、金を貸すだろ?
それで、借りた相手が約束の期日に返しに行く。

すると、どういうわけか、大倉の奴は姿をくらましちまう。
だから、金を返せない。
そして、日にちだけが過ぎていき、そろそろ返せないほどの金額に膨らんだときに受け取りに行くわけだ。
用心棒を引き連れてな。

大人の世界でも、ここまでえげつない話は聞かないだろ?
だから、近くの学校の不良どもも、大倉には一目置いていてな。
結構、影のボスのような存在になっているって噂もあるほどだ。
お前も、大倉には気をつけろよ。
あいつは、鼻が利くからな。

金のない奴の匂いをかぎつけると、どこかから現れて、そっと忍び寄ってくる。
そして、甘い誘いを持ちかけるわけだ。
「なあ、キミ。お金ないの? 安く貸してあげるよ」
……ってな。

それで、トランプの話だ。
その大倉が、大のギャンブル好きでな。
自分でも、イカサマケンカのショーアップをやってるぐらいだからな。
もともと、人生なんてギャンブルみたいなもんさ。
大倉を見ていると、その言葉が心から頷けるから不思議なもんだよな。

あいつはな、特にトランプに目がないんだ。
ポーカーやブラックジャックっていったら、すぐに飛んでくるぜ。
あいつがいっていたのを聞いたことがある。
「俺はギャンブルをするために、金儲けをしてるんだ」
ってな。

けれど、弱いんだ。
どうしようもなく、弱いんだよ、大倉は。
だから、まだみんなに憎まれなかったのかもしれない。
高利貸しで高い金利を取っていくくせに、ギャンブルにはめっぽう弱い。
勝負運がないのさ。

だから、せっかく儲けた金を全部吐き出しちまう。
それで、みんなも高い金利を取られても、すぐ取り返せるからいいやってことになるんだろう。
世の中、うまくできてるもんだぜ。
金は天下の回り物とは、よくいったもんだよな。

どうだ?
坂上は、ギャンブルは好きか?
1.好き
2.嫌い