学校であった怖い話
>五話目(荒井昭二)
>A8

彼も、もう一度映画を見直そうと思って、フィルムを巻き戻したんです。

そして問題の場面に差し掛かりました。
彼は、目を皿のようにして見つめました。
主人公のパンチが炸裂する……、かのように見えた。
「またか!?」
主人公のパンチは宙をかすめました。

ボスのパンチが主人公に炸裂する……。
その時、ボスのパンチはスクリーンから飛び出すと、時田君の顔を正面からとらえたんです。

「ぶごっ」
彼は短く声を出しました。
立て続けに、素早いパンチが彼の顔や上半身にヒットしたんです。

彼の顔は、骨が折れたように歪み、口からもごぼごぼと血をほとばしらせました。
目には、血が入って赤いセロファンをかけたようです。
その向こうで、時田君は確かに見ました。
スクリーンから身を乗り出して笑っている片山君を……。

その顔は、ボス役の生徒の顔ではなく、片山君のものだったんです。
彼は、殴られたショックと内臓破裂で亡くなりました。
彼が殺されたことを解決する、これといった決め手もなく、事件は迷宮入りとなったんです。

僕が何で、これを知っているかって?
ある日、僕の学校の机の中に、あるフィルムの入った箱が入っていたんですよ。

僕は、日の光に透かしてフィルムを見ました。
それだけではよくわからなかったので、僕は興味深く思い、わざわざ8ミリ映写機を買ってみようと思ったんです。

なぜか、そのフィルムを見たい衝動にかられてしまったんです。
スクリーンがなかったので、僕の部屋の白い壁を使いました。
それを見て僕はあぜんとしました。
そこには、彼が殺されるまでの記録がしっかりと映っていたんですよ。

そして、そのフィルムは彼が殺されたところで終わっていました。
僕は、とても気持ち悪くなりました。
ふと、顔を上げてみました。

スクリーン代わりにしていた白い壁には、時田君の無惨な姿が映ったまま……。
その時、時田君がつぶれた顔を持ち上げてこちらを見たんです。
僕は、突然のことに足がすくんで動けません。

そして、時田君は白い壁から飛び出してきたんです。
「うおおおおーーーーー!」
僕は、目をつぶったまま手元にあった映写機のスイッチを素早く切りました。

ゆっくり顔を上げると、そこにはいつもの自分の部屋が広がっているだけです。
もう少しスイッチを切るのが遅かったら、僕はここにいなかったかもしれませんね。
そのフィルムですか?

燃やしましたよ。
ええ、よく燃えました。
フィルムが、ぱちぱちいいながら燃える音に混じって、時田君の叫びを聞いたような気がしました。
あれは幻聴だったんでしょうか……。
あれから、僕の部屋の白い壁に彼のつぶれた顔が見えるんです。

僕の話はこれで終わります。
いよいよ最後ですね。
さあ次の方……どうぞ。


       (六話目に続く)