学校であった怖い話
>五話目(荒井昭二)
>Q10

僕は、ひるまなかった。
「時田君、しっかりするんだ!! 目を覚ませよ!! 君のしていることは、犯罪なんだよ!!」
時田君は、僕をにらんだままこういった。

「君まで、僕のすることにケチをつけるのかい? 中山のやつ、編集の時しょせんこんなもんさなどとぬかしやがった。だから、よりよいものを目指そうとしただけさ。君も、中山のようになりたいのか!?」

さっきの、ミイラは誰かに似ていると思ったら、中山君か!!
顔は崩れているが、面影がある。
あの二人に、何かいざこざがあったらしい。
時田君は、僕ににじり寄った。

そして、ポケットから小瓶を取り出した。
「まさか……、りゅ、硫酸!?」
僕はいった。
「お前も、俺の特殊メイクの材料になれ!!」

彼は、僕に襲いかかった。
その時、映画の中でさまよっていた中山君がスクリーンの暗闇から飛び出してきたんです。
そして、時田君の首をつかんだじゃないですか。
僕は、ただ立ちすくしているしかありませんでした。

中山君は、ただれた顔を時田君の頬に押しつけました。
そして彼は、時田君の手の小瓶を奪い取ると、フタを開け彼に飲ませたんです。
「うぎぎぎぎーーーー!」
時田君は、口から血を流し喉をかきむしります。

彼は、赤い血に混じって、白くてどろっとした汚物をごふごふと吐き出す……。
のたうち回ると、彼はすぐに動かなくなりました。
僕は、そんな彼から目を離すとスクリーンを見上げました。
そこには、時田君を見下ろしニヤッと笑う中山君が立っていたんです。

僕は、そこから夢中で逃げました。
こんな話、誰にしても信じてもらえないでしょう。
僕は、何も見なかった、そして何も聞かなかったことにしました。
中山君の遺体は、体育用具入れの倉庫の地下から発見されたそうです。

彼は時田君との口論の末、殺されたということになりました。
時田君はというと、良心にさいなまれ自分も服毒自殺したということになったようです。

ええ、決め手の証拠はあのフィルムです。
何でもそのフィルムには、時田君が中山君を特殊メイクするまでの経過もおさめられていたそうですよ。

僕は今でも、白いスクリーンを見ると、ふと中山君を見てしまうんですよ。
人間、こだわりすぎると怖いですね……。
僕の話はこれで終わります。
いよいよ最後ですね。
さあ次の方……どうぞ。


       (六話目に続く)