学校であった怖い話
>五話目(荒井昭二)
>R10

僕も逃げたよ。
必死だった。
こんな犯罪者と一緒にいるなんて僕は我慢できなかった。
そして、ミイラの彼が生きているなら助け出さなければいけない。
そう思うと、僕は一層早く走った。

しかし思ったより、彼は素早い。
時田君は、僕の前に立ちふさがる。
彼は僕をにらんだままこういった。
「君まで、僕のすることにケチをつけるのかい? 中山のやつ、編集の時しょせんこんなもんさなどとぬかしやがった。だから、よりよいものを目指そうとしただけさ。君も、中山のようになりたいのか!?」

さっきの、ミイラは誰かに似ていると思ったら、中山君か!!
顔は崩れているが、面影がある。
あの二人に、何かいざこざがあったらしい。
時田君は、僕ににじり寄った。

その時、彼の動きが止まった。
何かに、怯えているような感じだ。
僕は何かの気配を感じ後ろを振り返る。

そこには、崩れた顔をした中山君が立っていた。
時田君に中山君が近づいていく。
時田君は、足がすくんで動けないようだ。

「いい加減に、自分のしていることに気づけ!!」
そういって、中山君は怯える時田君の首を締め上げたんです。
「うげげ!!」
彼は短く叫ぶと気を失いました。

そして、中山君は時田君をかついでスクリーンの中へと帰っていったんです。
僕は、スクリーンに釘付けになりました。
そこでは、時田君が中山さんにしたしたことと、同じことが繰り広げられていたんですよ。

僕は、思わず目を閉じました。
時田君の悲鳴が聞こえる。
続いて、顔が溶けるシュウシュウいう音が聞こえる。

「中山君、もうやめてくれ!!」
僕は、その時叫んでいたんだ。
すると、辺りは静かになった。
映写機の音しか聞こえない。
僕は、恐る恐る顔上げてみた。

そこには、ただれた頬を寄せてにっこり笑う中山君と苦痛に満ちた顔をした時田君の顔が大写しになっていたんです!
そして、僕の方を見ている……。
僕は、夢中でその場から逃げました。
後で、聞いたんだけどあのフィルムはどこにも見あたらなかったそうです。

今も、あの二人はフィルムの中で生きているんでしょうか。
みにくい顔のままで……。
僕は、今でも白いスクリーンを見ると、あの二人の顔を見てしまうんです。
僕の話はこれで終わります。
いよいよ最後ですね。
さあ次の方……どうぞ。


       (六話目に続く)