学校であった怖い話
>五話目(風間望)
>D5

そして、風間さんはコップの上に手をかざした。
「うーーーーーーーん、ううーーーーーーん」
風間さんは、目をつぶるとコップに何か念を送っているようだ。

……………………………………… …………………………何も起きないんだけど。
僕は、腕時計をちらと見た。
先ほどから、もう五分経過している。

僕は、ガマンしきれず風間さんにささやいた。
「あのう、まだまだ待つんでしょうか?」
風間さんは、片目をぱちっと開けて僕を見た。
「ダメだ、今日は調子が悪いみたいだ。申し訳ない、みんなの期待を裏切ってしまった!
許してくれ……」

風間さんは、僕に向かって頭を下げた。
その時、それを見ていた一人が、にっこり笑って十円玉を摘まむと紙を上げて、そうっとコップの中に入れた。
そして、おもむろに、
「じゅ、十円玉が、コップの中に!!」
と、いったんだ。

風間さんは振り返った。
「……ほらね! 僕の言ったとおりだろう?
僕の宇宙人の能力は、ざっとこんなもんさっ。
皆さんも、ご協力ありがとう! どうもー!!」
みんな、笑いをこらえている。
これでどうにか、彼の機嫌をそこねることなく次の話に進められる。

僕は、もうあの紙とコップと十円玉が出た時点で、
「あー、これはもうだめかも……」
と思ったんだよね。
最初は、風間さんの話をなんとか記事にしなくちゃと思ったけど。

彼の話は、もういい……。
「えー、ということで風間さんが宇宙人であるということが証明されましたので、次の方の話をお願いいたします」


       (六話目に続く)