学校であった怖い話
>五話目(風間望)
>J4

「まあ、いいよ。信用できないのも、無理はないからね」
風間さんはにっこり笑っていった。
「僕らは、目が退化していてね。ほら……」

風間さんは、自分の両目に指を突っ込み目をくり抜いた。
あ、あれは義眼だ……。
「こうやっても通常生活に問題はないんだが、みんなが驚くと思ってね」

そしてまた、目をぽっかり空いた穴に埋め込んだ。
「僕たちは、超音波で意思の疎通ができるんだよ」
彼は、耳をぴくぴくさせた。
自由自在に耳が動かせるようだ。
これでは、目がいらないのもうなずける。
「そして、こんなこともできるのさ」

彼は、床に耳をつけた。
そして、一人でなにかつぶやいているようだ。
「風間さん、どうしたんですか」
風間さんは突然、その姿勢のままでパチンと指を鳴らした。

ゴゴゴゴとなにか音がする。
「うわーーーーー! 地震だ!」
早く机の下に、隠れなければいけない!
いったい、これはなんなんだ。

「もう大丈夫だよ」
気がつくと、もう地震はおさまっている。
風間さんは、僕たちを見下ろし笑っている。
「君たち、地震はどうやって起きているか知ってるかい?」
彼は、聞いた。

えーと、確かマグマ関係の……。
あ、そうだ。
彼のいっていることが正しければ、それは違うことになる。
「そうさ、地球上で起きる地震は僕たちがみんな操作してるんだよ。
まあ、僕たちも同じ生き物だから、今までは大地震なんて、そんな殺生なことはしなかったけどね」

彼は、得意そうにいった。
彼のいうことが本当なら、これはものすごいニュースになる。
でも……、普通の人には、僕が頭がおかしくなったって言われるだけかな。
まあ、いいや。
そうか、だから風間さんは普通の人とはちょっと違う香りがしたんだな。

凡人じゃないっていうのは、わかってたけどね。
「そうだ、その地底人が地上になんの用があるんですか?」
僕は聞いてみた。

「僕はね、地底帝国の王子様なんだ。ちょっとね、社会勉強のために地上に出されたんだよ。この、あふれる気品が感じられないかい?」
彼は、自慢げにいった。
僕は、夢を見ているのかもしれない……。

「あっ!! いけない! おやつの時間だ!」
風間さんは、何やらポケットから瓶を出した。
「これがうまいんだよね」
彼は、そういっておもむろにフタを開けると、一気にそれを飲み込んだ。

それは、ミミズだった……。
まだ、口の中に入りきらないミミズが、唇の周りでにゅるにゅるとのたうちまわっていた。
僕は、思った……。
もぐらじゃないんだから、そんなもの食べるなー!!

「あー、おいしかった!! 僕の話は、これで終わりだから次の人、早く話をしてよ」
風間さんは、そういうと満足そうに微笑んだ。
これは悪い夢だ。

……取りあえず、今はそんなことはどうでもいい。
ここにいるのが六人ってことは、七人目が来ない限り次の話が最後ということになる。
残り一人の話を聞かなければ…………。


       (六話目に続く)