学校であった怖い話
>五話目(福沢玲子)
>K7

「よし、もう一度開けてみよう」
僕はそういい、扉に手をかけた。
「ん?
扉がかたくなっているぞ?」
ロッカーは、鍵がかかっているようにびくともしなかった。

「……坂上君、演技はいいから」
福沢さんが、いぶかしんだ。
でも、演技なんかじゃない。
本当に、ロッカーは開かなくなっていた。

「もういいわ、私が開ける!」
福沢さんが、手を出してきた。
そして……。
僕達二人の手で、扉が半開きになった。

しかし、開いたのは一瞬だけ。
内側にいる何かが、ロッカーをバタンと閉めてしまったからだ。
「うわっ!!」
「や、やだ、坂上君……」
僕達は、顔を見合わせた。
「今の、何……?」
確かに、何かがいた。
ロッカーの中に、何かが……。

「と、とにかく部室に戻ろう。今のが、呪いのロッカーだとしても……僕達が自分のロッカーとして使ったわけじゃないから、きっと大丈夫だよ。ほら、瀬戸さんのロッカーを開けただけで不幸になるなんて、噂に尾びれが付いただけのことだろう? だから、きっと大丈夫だ……」

僕がそういうと、福沢さんは力なく笑った。
……新聞部に戻ろう。
そして、六人目の話を聞くんだ。
ここまできたら、もう引き下がれない。

僕達は、黙って歩いた。
新聞部に戻ると、こもった空気が僕達を迎えた。
僕はひと呼吸してから、六人目の話を聞くことにした。
今度はどんな話が、僕を待っているのだろうか……。


       (六話目に続く)