学校であった怖い話
>五話目(福沢玲子)
>M10

「どうしても、旧校舎に行かなくてはならないのでしょうか? できれば、部室でお話を伺いたいのですが……」
僕は、うつむきながらそういった。

………しかし、返事はない。
と思ったら、彼はスタスタと先に歩いてしまっていた。
「ま、まってください」

僕は、慌てて彼を追いかけた。
「ん、何だい? 君、何かいった?」
「で、ですから……」
走った為、息が苦しい。

僕は、下を向き胸を押さえながら、彼にふたたび同じことをいった。
「あの、部室に戻って話を聞きたいんですよ……」
………やはり、返事はない。

「あ……」
顔をあげると、彼がスタスタと先を歩いているのが見えた。

……わざとやってないか?
「坂上君、早くこっちにおいでよ」
彼が、手招きをしている。

……………僕は、黙ってあとをついていった。
もう、どうにでもなれという気持ちだった。
こうなったら最後まで、話を聞いてやる。
行くしかないんだ。
旧校舎へ。
立入り禁止の、旧校舎へ………。


       (六話目に続く)