学校であった怖い話
>六話目(新堂誠)
>C5

僕は、本を燃やして捨てることにした。
図書室側の廊下には新堂さんが待っているから、窓から抜け出して焼却炉へと急いだ。

呪いの本を燃やして捨てる……。
なぜ、そんなことを思ったんだろう?
新堂さんのいうことを聞きますと宣言した後なのに。

これは、裏切りだ。
……いや、裏切り以前の問題だ。
はっきりいって、わけの分からない行動をとっている。
僕は、何をしているんだろう。

わからない。
わからないが、決められた運命に従うように、焼却炉へと足を運んだ。

「さあ、燃やすか……」
呪いの本を一気に焼却炉へ投げ入れる。
「ぎゃあああっ!!」
炎の中から、悲痛な叫び声が上がった。

……え?
今のは、一体……!?
焼却炉から煙が出てきた。
物を燃やした時に、出る煙じゃない。
……霊だ。
どうやら、女性霊のようだった。
まさか、歌姫の霊……?

「こんな仕打ちを受けるなんて思わなかったわ。よくも、焼却炉なんかに投げ込んでくれたわね……」
どうしよう。
僕は、何てことをしてしまったんだろう。
しかし、もう時は戻せない。

……彼女は、歌い始めた。
悲しいメロディーを。
涙が自然にでてくる……。
彼女は、更に歌い続けた。
涙が止まらない。
それに、眠い。
眠い。
眠い……。
………熱い!!

「う、うわあーーっ!!」
炎で焼かれたような熱さが、僕の体を駆け巡った。
「ほほほ。その熱さは幻覚よ。
あなたは今、眠っているの。
私の歌でね。

安心して。あなたの体が本当に燃えている訳じゃないから。
その苦しみは、夢の中のできごとにすぎないのよ。
でもあなたは、これから永遠にその痛みを感じつづけるの。

あなたが目を覚まさないように、呪いをかけてあげる。
ねえ、どこで眠りたい?
どこか、誰にも見つからないようなところで寝かせてあげましょうか。
それなら何日かで餓死するから、炎の苦しみからは逃れられるわよ。

あはは………。
あはははあはははあはあ………」
彼女の言葉が、不気味に頭の中でこだました。
僕は炎の夢の中で、早くこの苦しみから開放されることを望んでやまなかった……。


そしてすべてが終った
              完