学校であった怖い話
>六話目(荒井昭二)
>F10

僕は、彼を引き止めることもなく、その背中を見送った。
……あまり気持ちのいい話ではなかった。
毎年一人、人形のために生けにえを出さなければいけないなんて。

その話が本当だったら、ここにいるみんなもその一人かもしれないわけだ。
「あっ!」
誰かが小さく叫んだ。
テーブルを見ると、そこには髪の毛のような束が置かれていた。
誰かが、頭から無理矢理引き抜いたような感じがした。

「誰が置いたんだ?」
僕は、その髪の束に手を伸ばした。
すると、いきなりテーブルに掛けてあった赤い布が僕におおいかぶさった。

「うわっ!」
僕はもがいた。
布は、僕に絡みつくようになかなか離れない。
ふと、布越しに誰かの手が僕の顔をなぞった。

「皆さん、ふざけないでください!」
僕はいった。
すると、布はするりと僕の頭から滑り落ちた。
僕は、誰の仕業かと思い、辺りを見回した。

「……………………嘘だろ?」
僕は、一人つぶやいた。
みんなが、座っていたはずの椅子には誰も座っていない。
僕は止まってしまった。

そう、そこにはぽつんと椅子に座っている小さな子供がいたんだ。
なんで、こんなところに子供が?
……いや、この子は人間ではない。

そうだ、これは……。
僕はすぐにわかった。
この子は、荒井さんが話してくれた人形だっていうことが。
そして同時に、僕が次の生けにえだということも……。


そしてすべてが終った
              完