学校であった怖い話
>六話目(風間望)
>E13

むっ。
君、なんて怖い顔をしているんだい。
ち、ちょっと……近寄らないでくれよ。
そんな顔で僕のような色男と並ぶと、君が引き立て役になっちゃうよ。
それでもいいのかい?

ほら、あっちに行ってくれ。
あっちに行ってくれってば。
向こうへ行けっ!
「……うわっ!!」
僕は、風間さんに思い切り突き飛ばされた。
風間さんって、冗談ばっかりいってるかと思ったら、こんな乱暴なこともするんだ……。

……あれ?
ふと、風間さんの足元を見ると、さっきの一万円札が落ちていた。
「君、今僕が落とした一万円を、拾って盗ろうとしただろう? ぎらぎらした目つきをして。あー、いやらしい」

……ひどい誤解だ。
僕は、怒った顔をしたつもりだったのに……。
風間さんは、僕をにらんでいる。
いったいこの人は、何なんだろう……。
「坂上君、さっきの、守護霊様の話なんだけど」
風間さんは、ポケットに一万円札を入れると、

再びニコニコして語りだした。

「実は、僕は君の守護霊様なんだよ」
………むむっ。
この人、いったい何をいってるんだろう。
また変なことをいって、お金をせしめるつもりじゃないだろうな。

「どうしたんだい、坂上君。
びっくりして、声も出ないのかい?
僕は、本当に君の守護霊様なんだよ。
……僕だけじゃない。
ここに集まった人達はみんな、君の守護霊様なんだ。
守護霊様っていうのはね、一人とは限らないんだよ……」

僕は、彼のいうことを聞き流すことにした。
適当にウンウンとあいづちをうち、視線はあくまであわせない。
……これで決まりだ。

「さあ、いってごらん。
僕は、風間さんを尊敬してますと。
なんてったって、僕は君の守護霊様なんだから……」
風間さんは、ぶつぶついっている。
僕は、彼を無視していた。
みんなは、しんとしている。

「ははは……、ああ、おもしろかった!
坂上君、大好きだよ。うっふっふ」
風間さんは、本当に楽しそうだ。
部室には彼の笑い声だけが、高らかに響いていた……。


       (七話目に続く)