学校であった怖い話
>六話目(風間望)
>AR7

あっそ。
じゃあ、前世占いはこれまでだね。
イボガエル様には、お帰りいただくよ。
イボガエル様、イボガエル様、ありがとうございました。
どうぞ、お帰り下さい……。

さあ、イボガエル様は終わりだ。
じゃあ、後始末をしようか……。
「え、か、風間さん……!」
風間さんは、いきなりイボガエルをつまみ上げると、ぶちっと握り潰した。
水風船を割ったように、赤い血が飛び散る。

「や、やめてください!!」
僕は、びっくりして彼を止めた。
すると彼は、指に付いた血をズボンでふき、ぺろりと舌を出した。

「君、こっくりさんをした後は、十円玉を処分するだろう?
……イボガエル様も同じさ。
占いの後は、道具のイボガエルを処分する習わしなんだよ」
……な、なんてことだ。
気分が悪い。

部室には、イボガエルの血のにおいがただよった。
イボガエルの血は、くさった生ごみのような、嫌なにおいがした。
「ち、ちょっと、窓でも開けましょうか」
僕が窓を開けると……。
「ああ、ありがとう坂上君」
風間さんはそういって、イボガエルを窓から捨ててしまった。

ちょっと、この人、いったい何なんだ?
こんなことをしたら、イボガエルに呪われてしまいそうじゃないか。

「大丈夫だよ」
風間さんがいった。

「大丈夫だよ、坂上君。
君が、イボガエルに呪われることなんてないよ。
僕が、守ってあげるから。
僕はねえ、君の守護霊様なんだよ。
僕だけじゃない。
今日ここに集まった人達はすべて君の守護霊様なんだ。

知ってる?
守護霊様っていうのはね、一人の人間に、何人もついていたりするんだよ……」
僕は、しばらく何もいえなかった。
危ない。
この人、ちょっと危ないぞ……。
僕は不安に思っていると、風間さんはいきなり笑いだした。

「あーっははは、面白い。
君、なんだいその顔。
怖いのかい?
君ねえ、守護霊様は、君の味方なんだよ。
だから、怖がらないでいいのに。
……その顔。
うわははは!!
あーおかしい!!

実はね、さっきのカエルは、おもちゃなんだよ。
おなかを押さえると水が飛びでるカエルのおもちゃなのさ。
中から出てきたのは、トマトジュースだ。
この部室が暑かったから、ちょっと腐って臭かったけど。
どう? 本気にした?」

風間さんは、楽しそうに笑っている。
……なんなんだ。
すっかり、からかわれてしまった。
僕は、ため息をついてテーブルを見つめた。
何だか、悲しい気分になりながら。
ふつふつと、こみあげる怒りを押さえながら……。


       (七話目に続く)