学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>F18

「……細田さんを助けてください」
僕は、家族を見捨てたわけじゃない。
この場をうまく取り繕えば、絶対に活路が見出せるはずだ。
とりあえず、今は細田さんのことを助けなければ。
僕は、そう思い、とっさに答えた。
彼女は、仮面の奥で笑ったように思えた。

「だめだ」

僕の頭の中に、そう響いた瞬間、細田さんの身体は天井の中に沈んでいった。
まるで、水面に身を沈めていくように、天井が一瞬ぶよぶよになって、その中に細田さんは飲み込まれていった。

「嫌だ! 嫌だよ! 助けてくれよっ! うわあーーーーーーっ!」
細田さんの姿は、あっという間に見えなくなり、あとはただの天井があるだけだった。
この天井が細田さんを飲み込んだなどといっても、誰も信じてくれないだろう。
いや、それより先に、僕が生きて帰れるかどうかさえわからない。

彼女は、つっ立ったまま、僕を見て黙っている。
あの仮面の向こうで、どんな目で僕を見ているんだろう。
僕は、いったいどうなる……。
ついに、たった一人になってしまった僕は……。


       (七話目に続く)