学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>H18

僕は、急いで口を開いた。
「あっちを、細田さんを選んでください!」
「坂上君!? そんな……」
細田さんの体が、天井から離れた。
ドサッと重たげな音を立てて、床に落ちる。

「うぐっ」
うめいた細田さんの脇に、少女が立った。
細い手を差し伸べる。
「起きろ」
また、頭の中に響く声。

けれど今度は、僕ではなくて細田さんに向けられたものらしい。
細田さんは彼女の手を取り、立ち上がった。
仮面の下の目が笑う。
「あの者のいう通り、おまえを私の伴侶としよう」

伴侶?
その言葉の意味を考える前に、少女は再び僕を見上げた。
「残ったあやつは、私からおまえへのプレゼントだ。
好きにするがいい」
聞いた細田さんの顔が、パッと輝いた。

僕を見上げ、ニヤリと笑う。
「そういうことか」
僕は目を見張って、彼を見つめた。
つばを無理矢理飲み込む。

「ほ……細田さん?」
「坂上君、君は二度も、僕を見捨ててくれたね。いくら僕でも、限度っていうものがあるんだよ」
さっきまでとは別人のように、細田さんは自信に満ちていた。
自分が殺されることはないと、確信しているのだろう。

仮面の少女とともに、この旧校舎のトイレに棲みつくつもりなんだろうか。
細田さんは笑顔でうなずいた。
「僕を裏切った罪は、命で償ってもらうよ」
その言葉と同時に、僕の首から血が噴き出した。


そしてすべてが終った
              完