学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>I18

僕は、急いで口を開いた。
「何をする気かしらないけど、僕を選べばいいだろう!?」
さっきは、気の迷いで、細田さんを見捨ててしまうところだった。
僕を友達をいってくれる細田さんを、これ以上裏切れない。

細田さんは体を震わせた。
「坂上君。君って人は……」
それから少女を見た。
「いや、僕をやれ! 坂上君は友達なんだ」
きっぱりという。

仮面の下で、少女が笑ったような気がした。
「ならば二人ともか」
そう聞こえた瞬間、天井がぐらりと動いた。
表面が柔らかくなって、体が吸い込まれる。
まるで、水に落ちたときのようだった。

細田さんが、手足をばたばたさせた。
「嫌だ! やっぱりやめてくれ!
坂上君だけにしてくれ!!」
情けなく、泣き声をあげている。

「おまえたちの友情は、そんなものか」
少女の声がして、再び天井に弾力が戻った。
しかし、細田さんだけはズブズブと沈んでいく。

「嫌だ! 嫌だよ! 助けてくれよっ! うわあーーーーーーっ!」
細田さんの姿は、あっという間に見えなくなり、あとはただの天井があるだけだった。
この天井が細田さんを飲み込んだなどといっても、誰も信じてくれないだろう。
いや、それより先に、僕が生きて帰れるかどうかさえわからない。

彼女は、つっ立ったまま、僕を見て黙っている。
あの仮面の向こうで、どんな目で僕を見ているんだろう。
僕は、いったいどうなる……。
ついに、たった一人になってしまった僕は……。


       (七話目に続く)