学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>L15

もう限界だ。
「帰りましょう」
僕はそういって、くるっと回れ右をした。
その肩を、細田さんの指ががっしりとつかんだ。

「帰るなんて許さないよ」
危険な感じを漂わせる笑顔。
目が笑っていないからだ。
細めたまぶたの間で、白銀色の瞳が光っていた。
細田さんじゃない!?
「誰だ……?」

声がかすれた。
「いつの間に……」
それを聞いて、細田さん?の笑みが大きくなった。
「最後までだまされてくれるとはね……。ちょっと早いが、ここで終わりにしようか……」
その言葉と同時に、デロッと顔の皮がはがれた。

柔和な細田さんの下から、ギョロついた大きな目玉が現れる。
昔、理科室で見た覚えがある。
人体模型の筋肉図解。
ちょうどあんな感じだ。
そいつは、のどをクックッと鳴らしていた。

おびえる僕を見て笑っているんだ。
どこからか、白い能面のようなマスクを出して、顔に貼りつける。
真っ白で異様な顔が、僕に近づいた。
「これが僕……旧校舎に住まうもの」
耳元にささやく。

「こいつが教室を出るところを捕まえて、皮をもらったんだ。おかげで君を手に入れた」
細田さんの皮を!?
それじゃあ、細田さんは……。
立ちくらみがした。
ふらつく僕をそいつが抱き止めた。

「素質はあるのに、使いこなせていない者。霊を祓えもしないのに、興味だけは人一倍ある者……僕たちは、そんな人間が大好きなんだ」
気が遠くなる。
僕は、いったいどうしたっていうんだ?
ゆっくりと崩れ落ちる僕の耳に、ヤツの最後の言葉が届いた。
「極上の餌としてね……」


そしてすべてが終った
              完