学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>AL8

そう、何もなかったんだよ。
廊下に顔を出してみると、サッと誰かが階段の踊り場に隠れるじゃないか。
だからみんなは……。
細田さんの言葉をさえぎるようにガタンと大きな音がした。

一瞬、僕たちは凍りついた。
ドアの向こうだ。
細田さんの話と同じだ。
恐る恐るドアを開けてみる。
……やっぱり、何もない。
悪い予感を抑えながら、廊下に顔を出してみた。

サッと踊り場に隠れる人影。
そんな馬鹿な。
細田さんの話の通りになっている!
僕は廊下に飛び出した。
人影の正体を見きわめたかった。

踊り場には、もう誰もいなかった。
上だろうか?
見上げたとき、不意に影がさした。
僕の首に、誰かの腕が巻きつく。
苦痛と恐怖の中で、僕は必死に相手を見ようと首をひねった。

首を絞めていたのは、おかっぱ頭の少女だった。
真っ白い仮面をかぶって、顔がわからない。
その目が、冷たく光っていた。
誰なんだ!?
問いかけようとしたけれど、声が出ない。
少女の目が、ほんの一瞬なごんだ。

そして次の瞬間、重苦しいゴキッという音が聞こえた。
なんの音だ?
考える僕の頭が、くらりとまわる。

鼻と口から、温かい液体があふれ出す。
ああ……僕の首の骨が、折れた音なんだ。
気づいたときには、僕はもう、暗黒に引きずり込まれていった。


そしてすべてが終った
              完