学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>AV1

◆五話目で福沢が消えている場合の始まり方

今、何時だろう……。
時計が見当たらない。
まあ、当たり前か。
この旧校舎はもうすぐ取り壊されるんだから。

……どうして、僕はここにいるんだろう。
そうか、先輩の日野さんにいわれて、学校の七不思議の特集を組むことになっていたんだ。
そして、七人が集められて……六人しか集まらなかった。

そして、僕は……。
どうして今、旧校舎にいるんだろう?
たった二人で……。
それも、ついさっき会ったばかりの人と。
もう、時間もかなり遅いことはわかっている。

こんなに暗い廊下を、月明かりだけで歩いている。
僕は、彼についていけばいいんだろうか。
先ほどから聞こえてくるのは、二つの足音だけ。
僕と彼以外は誰もいない。

どうして、こんなことになってしまったんだろう。
どうして……。
一人が話を終えると、その人がいなくなる。
話が終わるたびに一人、また一人といなくなっていったんだ。
そして、今は二人きり。
僕は、彼にいわれるがまま旧校舎にやってきた。

彼はどこに行くつもりなんだろう。
彼のあとをついていけば、目的地に着くんだろうか。
にこやかそうに人なつっこく話していた彼も、旧校舎に入ってからは何もいわず黙々と歩いている。
……彼の足が止まった。

「この教室だよ。さあ入って。そういえば、まだ自己紹介をしてなかったね。
僕の名前は細田友晴。二年生だから。……さあ、最後の話を始めようじゃないか」
そして僕たちは、一つの教室に入った。

……とうとう、君と僕の二人っきりになってしまったね。
坂上君。
これから僕の話す話をよく聞いておくれよ。
僕がこれから話す話は、今の僕たちにとてもよく似ているんだよ。
だから、ここに来たんだ。

これは、運命なんだ。
運命が僕たちを導いているんだよ……。
覚悟はいいね。
……それじゃあ話を始めるからね。

坂上君は、この旧校舎にまつわるトイレの怪談を知っているかな?
トイレの怪談には、有名なものが多いよね。
「紙をくれ〜」
といいながら便器の中から出てくる青白い手の話。

汲み取り式のトイレの便器から覗く、ギロリと光る二つの赤い目の話。
……いろいろあるよね。
でも、もっとも有名なのは、やっぱり花子さんじゃないかな。

ドアをノックすると、誰もいないはずのトイレの中から、花子さんの声が聞こえてくる。
そして、ドアを開けると、そこに花子さんの姿が……。

花子さんの話は、名を変え、姿を変え、全国に散らばっている。
性別も違うし、名前も違う。
どうして出るのか正体や原因がわかっているのもあれば、謎に包まれているのもある。
ただ、みんな共通しているのは、トイレに出るということさ。

トイレに出る不思議な霊の存在を、そうして花子さんと呼んでいるんだよ。
そして、当然のようにこの学校にも花子さんの噂はあるんだよ。
で、これから僕たちでその花子さんを呼び出す実験をしようというのが、僕の提案なんだけど。

……どうかな、坂上君?
君、やってみないかい?
1.やってみる
2.いやだ