学校であった怖い話
>六話目(岩下明美)
>C6

そうよ。
岡崎さんの親は、ふざけるなといって、彼女を追い返したの。
……でも、大川さんは諦めきれなかった。

それで、ついに決心したの。
こっそり、岡崎さんの墓を掘ってしまおうとね。
彼女、どういう神経をしていたのかしら。
死者のものを盗んでも、誰にもばれなければいいと思っていたみたい。

大川さんは、夜更けになるのを待って、行動に移したの。
お墓なんて、昼間だって怖いと思うわ。
それも真夜中。
女子高生がたった一人で。
なかなかできるもんじゃないでしょうに。
それも目的は墓荒らしだもの。

大川さんて、よほど神経が図太かったのね。
それとも、墓に眠るルーベライズが彼女を呼び寄せたのかしら。
うふふ……。
何にしろ、彼女は墓石をどけると、その中から岡崎さんの骨壷を取り出したの。

そして、骨壷を開けると……。
「ああっっ!!」
そこには、ルーベライズなんて入っていなかったの。
中にあったのは、焼いた骨の破片と灰のみだった。
「な、なぜ……?」
大川さんは、一瞬戸惑ったわ。
でも、彼女は考えたの。

もし、ルーベライズが岡崎さんの死体と一緒に燃やされていたとしたら……。
この骨壷の中には、確かにルーベライズが入っていることになるってね。
それで、骨壷の中の灰を持って帰ったのよ。

本当に、すごい神経よね。
考え方が、普通じゃないわよ。
まあ、それだけルーベライズがすごく欲しかったってことかしら。
するとその夜、大川さんの元に、制服を着た女の霊が現われたの。
大川さんはすごく驚いて、すぐに逃げだそうとしたわ。

でも……。
部屋のドアが、見あたらなくてね。
彼女は、あちこちの壁を叩き回ったの。
けれど、やっぱりドアがどこにあるのか分からなかった。
大川さんの様子を見て、霊は満足そうに笑ったわ。

そして、その霊の手元には、ルーベライズらしきペンダントが……。
霊はいったわ。
「バカね、大川さん。
ルーベライズは、私と一緒に埋葬されたわけじゃなかったのよ。
でも、まあいいわ。
あなたの執念に免じて、これをプレゼントしてあげる……」

それを聞いて、大川さんは、霊にフラフラと近付いたわ。
考えなしっていうのかしらね。
そして、ルーベライズを受け取ろうと、手を伸ばしたの。
すると……
「ぎゃあああっ!!」

大川さんは、首を絞められたのよ。
岡崎さんの霊によって。
ルーベライズの、ペンダントチェーンでね……。
「ぐ……ぐぼっ……!!」
大川さんは、うめいたわ。

でも、霊の力は強くて、抵抗できなかった。
岡崎さんの霊は、容赦なかったわ。
大川さんの首を絞め、口に詰め物をして、息をできなくさせたの。
「ぐ……あうう……」

大川さんは、低いうめき声をあげて倒れたわ。
そして、そのまま息を引き取ったの……。
彼女は、口の中に灰のようなものを沢山詰められて、殺されていたというわ。
きっと、その灰は……。

うふふ……。
駄目な大川さん。
墓を暴くほどの行動力がありながら、なぜ自分の力で、運命を歩もうとしなかったのかしら。
岡崎さんはね、ルーベライズの力を使ったことがなかったそうよ。
ルーベライズは、当時の値段で家一件買えるくらいのものだったから。

大切に、金庫にしまわれていたのよ。
だから、彼女はその効力を知っていながらも、願いごとを頼むことがなかったというわけ。
なんでも、ご両親は、ルーベライズを彼女の嫁入り道具の一つにしようとしていたそうよ。
まあ、その前に岡崎さんは亡くなってしまったけれどね。

交通事故よ。
みんなの噂は、事実に尾ひれがついただけのもの。
それに振り回された、大川さんって何なのかしら。
大川さんが死んだ部屋に、ルーベライズのペンダントはなかったそうよ。

きっと、岡崎さんの霊がもって帰ったのね。
今は、また彼女の家の金庫に入っているんじゃない?
……坂上君。
運命って、なんなのかしらね……。

わたしの話は、これで終わりよ。
でも、まだ七人目は来ないのね。
どうしましょうか。
ねえ、坂上君……?


       (七話目に続く)