学校であった怖い話
>六話目(岩下明美)
>D9

うふふ……。
あなた、本当にそう思うの?
だとしたら、甘すぎるわ。
なぜ岡崎さんは、あんな目にあったと思うの?
彼女の願いを叶えるなら、もっと違うやり方が、いくらでもあったでしょうに。

……ルーベライズは恐ろしい石よ。
人の願いを叶える一方で、不幸まで運んでくるの。
ねえ、坂上君。
考えてもみてよ。
人生って、そういうものじゃない?

幸せな時もあれば、不幸な時もある。
不幸な人もいれば、幸せな人もいる……。
それが人それぞれの、運命だとしたら。
不幸と幸福が絡み合うのが、運命だとしたら……。

ルーベライズの力で変えた運命も幸福と不幸の両方を、伴っているものなのかもしれないわね。
持ち主の願いはすべて叶えても、その一方で、恐ろしい運命を運んでくる。
ルーベライズは、そういう石なのかもしれないわ。
うふふ……。
話を戻しましょうね。

大川さんは、岡崎さんの墓の前で、ルーベライズを握り締めて祈ったわ。
私を、最高に幸せにしてと。
死者の墓を暴いた後で、土を元にも戻さず、自分の幸せを祈ったのよ。
岡崎さんの墓を暴いた後ろめたさが、そうさせたのかもしれないわね。

ルーベライズに幸せを祈れば、自分の身は安全だ。
彼女は、そんなことを考えていたのかもしれないわ。
大川さんは、自分の幸せを祈った。
最高の幸せがほしいと。

そうしたら……。
彼女の体は、ふわっと軽くなってね。
頭の中が、幸せな気持ちで満たされたの。
幸せな気持ちっていうか……。
うきうきするような、楽しい気持ちね。

そして大川さんは眠りについたの。
頭がぼうっとして、その場に倒れこんだのよ。
岡崎さんのお墓の前に……。

大川さんは、そのまま息をひきとったそうよ。
……彼女は、ルーベライズに命を奪われたの。
でも、願いは叶えられたのよ。
大川さんの願いは、彼女に最高の幸せを与えること。

大川さんは、ひどい性格だったでしょ。
だから、後に様々なトラブルを起こすっていう運命が、決まっていたんじゃないかしら。
それで、ルーベライズはこう判断したのよ。
彼女は、早く死んだ方が幸せだ、って……。
それが、一番最高の幸せだって。

うふふ……。
大川さんは愚かね。
私だったら、幸せは自分の手でつかむわ。
他人を殺してでも、手に入れる。
運命は、自分で切り開くの……。

わたしの話は、これで終わりよ。
結局七人目は来なかったわね。
でも、なかなか楽しませていただいたわ。
それじゃあ、そろそろ帰りましょうか……。


       (七話目に続く)