学校であった怖い話
>六話目(福沢玲子)
>E8

鈴木君は、彼女に性格を直せといったの。
そうしたら、彼女は泣きだしてね。
「鈴木君、あなたまでそんなことをいうの?
お兄ちゃんと、同じことをいうの……?」
そういって、廊下に座り込んでしまったの。

鈴木君は、眉をひそめて彼女のことを見下ろしたわ。
すごく、いやな顔をしてね。
彼女は、それを見て傷ついたわ。
そして、こういったの。
「お兄ちゃんの時と一緒だわ。鈴木君、お兄ちゃんと同じ目をしているわ……」

彼女は、ポケットからキラリと光るものを取り出したわ。
それは、カッターだった。
そして彼女は、鈴木君の背に手を回し、後ろから……。
「うわあああっ!!」
彼は、首を押さえてうめいたわ。

「ごめんなさい、鈴木君。
ごめんなさい……。
だって、こうしないとあなたの心は引き止められないんだもの。
そう、占いにでてたんだもの。

好きな人の心を留めておきたいなら、なんでもしなさいって。
刃物を使ってもいいからって。
お兄ちゃんの時もそうだったわ。
お兄ちゃん、彼女ができたっていってたんだけど。
私がお兄ちゃんにカッターを突き刺したらわかれてくれたんだもん。

占いの、通りだったんだもん。
でも、お兄ちゃんはひどいよ。
私の性格を、直せっていうんだもん。
占いはするなっていうんだもん。
そんなの、できるはずないよ。
私、占い好きなんだもん。
だから、だから……」

鈴木君は廊下に倒れこみ、助けを求めるように何度も手を宙に泳がせたわ。
でも、誰も助けてはくれなかった。
もうみんな、下校していたからね。
平井さんは、くりくりとした目で彼を見つめ、制服のポケットからタロットを取り出し、いったわ。

「鈴木君、ごめんなさい!! 今、すぐに占ってあげるから。
どうしよう、私……。
あなたを引き止めたかっただけなの。
なのに……。
ああ、だめだわ。
占いのカードが落ちちゃった!

あっ、死神が出たわ。
これは、死のカードよ。
鈴木君、死んじゃうの?
どうしよう。
あなたとは、結婚したいと思っていたのに。
でも、これが運命なら……。
きっと、どうしようもないわね……」

平井さんはぶつぶつと呟きながら、廊下を歩いていったわ。
倒れた鈴木君の足もとには、死神のカードが一枚……。
………。
鈴木君は、その後通りかかった先生に助けられてね。

すぐ手当をして、助かったそうなんだけど。
彼女は、この事件がきっかけで転校していったわ。
そして最後に、こんな占いを残していったそうよ。
「私はいつか、又この学校に戻ってくるわ」
ってね…………。

本当かなあ。
彼女の占いだから、あてにならないとは思うけど。
ね、坂上君。
あてには、ならないわよね。
……わたしの話はこれで終わりよ。
でも、まだ来ないね。
七人目が。
さあ、どうしようか……。


       (七話目に続く)